古城、自然、親切の国・IRELAND

  16年前にイギリス旅行をしたときと同じ、格安航空券のアエロフロートを 使ったけど飛行機はエアバス社製のA310の新品でここでも東西の溝は消えてい た。ただモスクワではTRANSITの客にも航空券とパスポートのチェックを行うの で行列ができて、さすがロシアと思わせる。ロンドンからダブリンへの飛行機に 乗ると日本人は我々だけになる。成田をでてもうかれこれ18時間になるころダブ リンへ着く。そのあとほぼ1週間、北海道くらいの大きさのこの美しい島を東西 南北にレンタカーで走り回った。ピラミッドより古い遺跡をを持ち、人類がもっ とも早くから住み着いた割には自然がそのままで、その中にまばらに点在する白 壁の家は絵本を見てるようだ。ダブリンを一歩離れると急に人に会わなくなる。 道の両側に限りなく広がる牧草地の中をひたすら走る。やがてお城と教会のある 小さな町を通り抜けると、また羊の群を見ながらのドライブ。12世紀に出来たお 城を改良してホテルにし、客を持てなし、結婚式場にもなっている。と思えば西 海岸沿いには暗い森の入り口のようなところに門を構え、森の中を車でしばらく 入ってやっと館が見えてくるようなマナーハウス(荘園主の家)がある。ここもB Bになっていて、お客に昔をしのばせる豪勢な生活を体験させてくれる。ダブリ ンでも首都最大の国立大学であるTrinity Collegeが1000人も受け入れるだけの 宿舎と食堂を持っていて、インターネットで申し込みを受け付けている。夏でも20 度を超えることはほとんどなく、冬でも零下になることもないらしい。西海岸 以外にはほとんど山もなく、国中が羊のいる緑の公園のようだ。変化がないとい えば確かにない。でも「外人」の立場から見るせいか、どこで道を聞いても実に 丁寧に答えてくれるし、困っているときは助けになろうとしてくれる。どこを向 いても絵になるし、一軒一軒の家が実に美しいのは何故かと思う。そのおとぎ話 の絵本のようなひとときを経験して日本に帰ってくると、大きな夢から覚めたと きのとまどいを感じる。


上の写真はダブリン郊外のB&Bの朝食。Mrs. Yallowayが給仕してくれるIrish Breakfastは随分heavyである。下は農園を見せてくれたAnna O'Connerさん。 右の写真のponyはこれでも大人。ここには黒豚や十数種の鳥や羊、牛馬が広大な 丘に放し飼いされている。彼女の息子Tony君は横浜で英語の教師をしているとか 。さぞ日本の夏に参っていることだろう。

 上の写真はダブリンから30分くらいのBarberstown Castle。ここはホテルに なっていて1泊朝食で1万円くらい。3000円前後ですむ他のBBに比べると3倍もす るが結構泊まる人がある。私達も1泊したが廊下から手すりから壁の大きなエリ ザベス朝の絵画、上のシャンデリアから金ぴかに複雑な彫刻の施されたイスの足 に至るまで、すっかりタイムトンネルを通った世界だった。右上の結婚式は丁度 そのときそのお城で出会ったもので、右のバクパイプの人の音色はお城の庭で雰 囲気を出していた。



 右の写真はW.B.Yeatsがその詩"The Lake Isle of Innisfree"で詠ったInnisfree 島のあるGil湖。このそばに立っていたらその詩にある水が岸にあたる音が静 かな場所に響き、Yeatsと同じ気分になった。湖畔に1軒だけBBがあり、早速 飛び込んで泊めてもらう。部屋の窓から見ていると暗くなっていく水面が何とも いえない。  

下はダブリンのTrinity Collegeの正面を入ったところ、ここはダブリンの中 心部で夏休みも観光客のために解放されている。中は随分広く約1000人の宿泊を7 〜8月の間は受け付ける。市価よりちょっと高いけど大学の厳かな鐘の音を聞 きながら一晩過ごすのも悪くない。dining hall が下にあり、朝は1000人くらい が一度に食事をとれる。それが下の左隣の写真である。一番手前が悦子。外人ば かり500人くらいが食事をしたが日本人は我々だけであった.
上の写真はマナーハウスの庭から見える海の景色。まさに絵はがき以上の景色 。手前には名も知れぬ野草が茂り無数の色とりどりの花を咲かせている。静かだ 。年老いた庭師が釜を動かして芝生の手入れをしている。ホスト氏は部屋の鍵を くれない。曰く"It's absolutely safe."食事が終わって、真夏なのに暖炉の前で 火にあたりながらベルギー人が言った「あなたは本当の日本人なのか。ベルギー に来る日本人は団体旅行だけなのだが」と。彼らにとっては自分たちのsanctuary を犯されたくないとでも思っているようだ。 左の写真はturfと呼ばれていて、一種の芝生なのだが、燃料用に栽培し根っこ ごと引き抜いて乾燥させ暖炉にくべる。炭のようだが煙がでるので、煙突がいる 。木もあまりないところでは燃やすものはこんなものになる。草は干して黒いビ ニールの袋にきれいに詰める。家畜の餌。右の写真は帰りに寄ったロンドンのGlobe Theatre。この5月に出来たもので1600年のものを忠実に復元した。従って舞台 の前の立ち見席は屋根がない。雨の時は写真のように傘をさすか、フード付きの コートを着始める。それでも自然の雰囲気を取り込み、観客も参加しつつ、演劇 を創造するのが面白い。ここで「冬物語」を見た。

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