Harrison Hot Springs Resort
大自然のふところとはこういう所かと思う。この先60km先まで、このままで広がっているというLake
Harrisonの前にたたずんで、その静けさに包み込まれてじっとしていると、自分が自然の一部になり、霊気が身体中に浸み入るような感じがする。晴れていても、雨でも、それなりの趣があり、天候を越えた大きさがある。このとてつもない広がり、そこに周囲の山が黒い影を落とす。木々の微妙な色の変化が、下の湖面の影にも反映されている。柔らかい風が水面に触れて岸に寄せる静かな波の音、岸辺の緑、黒首のカナディアンダックの家族が親ダックに引き連れられて、水面を行く。雲間遙かにロッキーの峰に光る残雪の筋が望まれる。
バンクーバー市内から車で2時間程東に走ったところにある小さなリゾートだ。ほとんど全室がすぐ前に広がる大きな湖に面している。レイク・ルイーズのように派手な花などは植えられていないが、摂氏80度の温泉が近くに出ていて、そこからパイプで引かれたお湯は大きな中庭にプールのような3つの温泉風呂(1つは温水プール)を作る。大きな庭石などの中に露天風呂のような感じで配置されてはいるが、ここでは必ず水着を着けて温泉に入るし、下が平らなコンクリートなので、暑いお湯のプールといったイメージである。実際私はゴーグルを着けて泳いでいた。彼らはぬるいお湯が好きらしく、3種類の温泉は温度差がつけられているが、いつもぬるい方が込み合っている。部屋のテレビで見るとアメリカの南の方は摂氏40度近いようだが、こちらは寒いくらいで、露天風呂も、出ると身震いが来るくらいであった。外出時にはウィンドブレーカーが丁度良いくらいである。
ここはMargaretさんのお気に入りの場所でもあるというので彼女も同じホテルに宿泊してガイド役をしてくださった。1階のソファの置かれたロビーのガラス越しに、赤い妙な筒がぶら下がっていた。彼女の説明では、ハチドリ(humming
bird)だという。赤い筒の中には密が入っていて、ハチドリはその長い嘴で飛びながら、うまく吸い込んでいる。、小さな羽をブンブンいわせながら、空中に停止することができ、ほんとに小さな鳥なのに、その様子を近くで観察することが出きる。ホテルの係員が数時間おきに密を入れに来る。また毎日4時になるとAfternoon
Teaと称して、中央のソファのあるロビーで、お菓子と紅茶・コーヒーのサービスがタダで、出される。お客は自分の好みのお菓子を選んで、ソファのところへ持っていき、気の合う人と談笑を楽しむ。こんなサービスが日本のホテルにもあればと思う。環境を気持ちよく整える配慮がされている。こんなところもここがカナダ人の中でも、ヴィクトリアのEmpress
Hotelについで、2番目に人気があるホテルである理由かもしれない。
実際この町には大きなホテルは1軒だけで、他に小さなモテルが数軒ある以外は数階建てのコンドミニアムだけである。窓の前には神秘的な湖が見え、すばらしい景色が前後に広がる大自然の中なのに、コンドミニアムは大体12万カナダドル位だから税金を考えないと1千万円位でかえることになる。しかも部屋はゆとりがある広さの上に、冷蔵庫などの家具付きで、専用の温泉付きだから、日本だと考えられない条件だ。
20カナダドル(1600円)で湖を2時間ほどまわってくれる遊覧船が、静かな木製の桟橋から出るという立て看板があり、行ってみた。20〜30人くらい乗れそうな船であったが、10人以上客が来ないと、出帆しないという。すでに予約電話で3人入っていたようだが、我々3人を加えても10人にならない。客が増えるかもしれないから船に入って待っていてくれという。しばらく待ったが出発時間になっても、その予約したはずの人たちも来ない。3人ではダメというのであきらめた。次の日、同じ時間に同じように待ったが、やはり全然お客がつかない。確かにその辺を歩く人の数も少ないので、客が少ないのは仕方ないのかもしれないと思う。でもそれだけ静かなのだ。
仕方ないので、ウラの山を歩いてみた。トレイルが実にきちんとできている。段差があるところは気組みできれいに階段ができていて、細かい注意書きも徹底している。しかしまわりは大森林で、根元も灌木が茂り、露出した根っこにはこけが生えて、とても足を踏み込めるような場所ではない。こんなところを開拓して自然を生かしたまま人が入り込めるようにするのは大変なことだと想像がつく。最初はゴールドラッシュの時期に金を目当ての人が入り込んで、温泉を見つけ、開発したらしいが、21世紀の今でも当時の面影が忍ばれる。
結局、ここに3泊4日滞在したが、その期間のセット料金で一泊朝食付きで一人7000位の見当になる。温泉は入り放題だし、ディナーも1回分含まれた料金だ。その晩餐はバンド付きの大きな部屋だった。退職した老夫婦も多く、最初はデキシーランド・ジャズやワルツ、マンボなどの演奏。それに合わせて、腰の曲がりかかった老夫婦が自然に立ち上がって真ん中のスペースへすすみ、ダンスを踊り出す。何のてらいもなく、人生を楽しんでいる様子は日本と違うなと思う。ダンスのダの字も知らない我々はただただ感心して見守るばかりであった。
このホテルのテレビはちょっと変わっていて、リモコンのボタンでチェックアウトができる仕掛けになっていた。日本人も結構泊まるようで日本語の画面もある。チャンネル用の数字のボタンを押して、質問に答えていくだけで、カウンターで待たされることなく、カギを返すだけになるので、便利といえば便利。カナダの辺鄙な場所なのに、こんなモダンな仕掛けがあるのにびっくりした。
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Pacific Long Beach;Tofino
(バンクーバー島西海岸)
6/16Hladik夫妻と我々夫婦の4人を乗せた彼ら愛用のHondaアコードはまたバンクーバー島東岸のNanaimoまでフェリー、そのあと北へ進み、Port
Alberniから西へ進んで、西海岸のPacific Long
Beachの北、Cox BayにあるPacific Sands Beach
Resortと言われる場所に来ていた。ここもカナダ人が3番目に行ってみたいという結果が出ている場所である。ひと気のない海岸沿いの松林の中にコテッジが並んでいて、家具付き、2寝室でリビングとダイニングは共用である。ソファ、食卓、バストイレだけでなく、台所のコーナーには冷蔵庫や電子レンジ、皿類、鍋、ナイフ・フォークなどもついているし、夜になるとかなり寒いので、電気暖房がひとりでについて部屋中が暖かくなる。暇な人のために、カナダの自然を描いた写真集なども何冊か置いてあって、ここも気持ちよく過ごせる配慮が感じられる。
外から見ると入口には馬鹿でかいゴミ箱(bin)が置いてあり、鳥の声がよく響くベランダには椅子がある。そこでは波の音を聞きながら読書している人もいる。近くには店などないので皆食料持ち込みで、料理を楽しむ。我々はあまり手をかけず、鮭缶やサラダに紅茶、ジュースなどで夕食を済ませた。海岸は、ときどき散策する人やゴムのスーツに身を包んでサーフィンを楽しむ若者が少々。夕食後、女性達は元気がないので、Horstさんと私でビーチを歩いてみる。彼はドイツ系の人で、英語よりドイツ語の方が得意のようだが、なかなか社交的な人で、誰にでも話しかる。途中で会ったサーファーの女性も一人でのんびりと海に出ていく。彼の服装が冬支度であるのを見ても、寒さが分かろうというものだが、私などジャンパーの襟を立てて海風で顔がこわばるのを防いでいたくらいだった。でも林の中では色とりどりの小鳥やリスまでが顔を出す。ここへ来る途中、道路のすぐ脇に熊が腰を下ろして座っていた。こんなところで熊が現れたらどうしよう!
このあたりは北緯50度くらいだから、アジアでは樺太中部くらいになる。だから夏、夜はなかなか暗くならない。日没が9時半ころ。目の前の小さな島の向こうに日が沈んでいく。潮の満ち干も大きく、干潮だと一面に砂が出てくるが、満潮になるときは何かコテッジのところまで、水が迫ってくる感じである。Horstさんがオール・ウェーブのラジオを持ってきた。ソニー製でカナダのFMがきれいに入る。夕暮れに静けさの中にきれいな音楽が流れる。
次の日、もう1泊するつもりで、このPacific
Rim 国立公園を動いてみる。左の地図はウィカニニッシュのビーチ展望台にあったもの。指のところが日本。写真の真下の所に今居る。この太平洋が日本とつながっている。「アッ向こうに日本が見えた」とHorstさんが双眼鏡を覗く。
右に目をやると、この溢れんばかりの流木。昔は片づけたそうだが、今では多すぎて手が着けられないらしい。結局この辺の大森林の樹木の墓場というわけだ。老木が倒れて河を流され、海へ漂流したものが、再び波に運ばれて、このビーチにうち寄せられる。中には我々の身長以上の太さの巨木もあり、それが皆どういう訳か真っ白になっている。日本では、流木は生け花などに使われるけれど、この光景の中では何か殺伐として重なり合う植物の死体というイメージだ。
ここは今はレストランと案内所になっているが、以前はホテルで、お客の多くは冬の太平洋の荒波を見るために泊まっていったという。この太平洋に突きだしたような建物で、大きなガラス越しとはいえ、怒り狂った大自然の迫力を体験するというのも、忘れられない経験になるに違いないが、今はもう不可能だ。
それから我々は北端の町Tofinoに向かった。静かで落ち着いた良い町だ。高台にあるdowntownから、港が見下ろせる。近づくと、港なのに船より水上飛行機が横付けしていた。陸の孤島のような場所なので、飛行機の方が便利なのだ。バンクーバーからも定期便があるし、遊覧飛行もやっている。若い飛行士が降りてきた。今日なんか絶好の天気ですよ、と言う。でもちょっと値段の方が高いのでやめにした。
途中、やっと本物のメイプルに出会った。カナダの国旗の図案にもなり、メイプル・シロップでよく知られているが、メイプル(maple)というともみじと訳され、日本の「もみじ」と結びつけられるが、実際はこの写真のように肉厚で、大きな葉っぱである。もみじはデリケートな美しさで、秋を彩るが、これは重厚で迫力がある。大自然のカナダではこっちの方がぴったり来るのは当然だろう。
再びSand Beach Resortに戻って、夕食を済ませる。今日はHladik夫妻の結婚記念日だという。皆でHappy
anniversary!を祝った。そのときHorstさんのラジオから音楽が流れてきた。2人は自然にダンスを始めた。この辺がやっぱりカナダ人なんだなあ!
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