John(64)はジャワ島の東端スラバヤの先の小島で生まれ、今はスラバヤで船舶運航会社を経営している。インドネシアは13,000もの島で出来た国で、中小の島の間の交通手段は船しかなく、彼は自分の所有する大小36隻もの汽船を使って貨物と乗客を海上輸送する。そして彼が所有する船舶の大半は日本から買った中古船だそうだ。つい1ヶ月前に彼が船で運搬を請け負う建築材・セメント関係の会社の接待で日本への団体旅行があり、Johnは東京と北海道を回って帰国した。そこで日本が気に入って、帰国してから子供たちにその経験を話し、今度は子供たちを誘って家族を引き連れての再訪が決まった。 米国留学後父の会社を手伝う長男Jimmy(35)と嫁のHerlina(31)、それに2人の間の孫娘Christie(7)とKatheryn(5)。更に長女Christin(34)が嫁いだ夫Alvin(38) (ジャカルタで梱包(packaging)関係の会社に勤務)とその4人の孫娘たちSahanlene(11), Tiffelyn(10), Darlene(5), Nadelyn(2)を連れ、その上まだ未婚で父の会社を手伝う米国留学帰りの娘Melinda(30)も一緒の12人という大所帯。孫たちは皆ジャカルタやスラバヤのアメリカン・スクールに入れているし、両親も米国留学経験者ばかりで、家でも英語を使うことが多くて、例えば小学1年のKatherynなども英語を理解し少し話す。 6/21(土) 梅雨の晴れ間。定刻に新宿プリンス・ホテルロビーで一同勢揃い。昨夜は真夜中過ぎにミニバスを雇ってここまで辿り着き、寝込んでいて、朝食がまだだというので近くの松屋へ。子供たちの足が遅いこと、すぐに疲れることなどを考慮して、3台のベビーカー持参。時には3台に4人も乗せて移動。彼らは中国系インドネシア人だが全員一応キリスト教徒だそうで、食事制限はないとのこと。子供が6人も含まれるので、母親たちは牛丼の大盛り3つと定食を取って、自分たちも食べながら、子供が食べられるものを小皿に分けて子供たちにも。そうこうしているうちに1時間くらい過ぎる。 ベビーカーを押しながらの移動なので時間がかかる。まず都庁へ向かう。途中、駄菓子、ジュースを仕入れたり、写真で止まったりで実にノロノロ。Green TeaのKitKatはないか? サンリオは? などの質問を受けながら、明日、明後日ディズニーランドへ行くのにシャトルバスを拾う京王プラザを確認、都庁は中庭で2020のための(?)催しが。ベビーカーを伴うので階段を出来るだけ避けるが、ときどきは担いて上り下りしないわけには行かない。売店の少ない南展望台はスペースがあるのでそちらを選ぶ。長い棒の先にiPhoneを取り付けては、仲間を見つけ自分と一緒に撮影するHerlina。Christinは赤ん坊にミルクを与えるのに懸命。Johnは椅子でゆったり。 新宿駅に戻り、JRで原宿へ。日本で鉄道に乗るのは初めてで、親が学齢に達しない子供をベビーカーに乗せて切符をスロットに入れながらゲートを抜けるのも結構大変。土曜日の昼でホームの混雑もひどい。電車に乗る段になっても、もたもたして3台のベビーカーがやっと乗って何とか私が飛び込むと、とたんにドアが閉まってホッとする。 明治神宮の玉砂利道もベビーカーにはきつい。さっき食べたばかりの感じなのに、もう空腹を訴え始めるものもいる。とりあえず「文化館」の無料休憩所へ。うどんやカレーや丼物もあるので、良いかと思ったのだが、数人は食べるものの他の人たちは持参したインドネシアのパンにかじりつく。屋台のようなところはないかと言うが、急に言われても「ない」と言うしかない。 「土曜だし本殿に行けば結婚式の行列があるかも...」と言っても、玉砂利に慣れないのか「疲れたので、ショッピングがしたい」とのこと。とりあえず、混雑の竹下通りへベビーカーのまま突っ込む。早速、和食をさっき食べなかった若者たちはクレープの立ち食い。女性たちはベビーカーに子供を眠らせたまま、男性群に任せて、ダイソーに入ったきり出てこない。父親たちとJohnと私はベビーカーが通行の邪魔にならないように気遣いつつ、子供を見ながら道端に座り込んで雑談して待つ。それぞれ買いもの終えると今度は渋谷へ行きたいとのこと。かなりの混雑の中、再度山手線にベビーカー3台を何とか乗せて、渋谷へ。ハチ公口階段付近にはエレベータもなく、大回り。何とか名物交差点とHachiを見て記念撮影。HerlinaとMelindaが109へ行きたいと言う。別行動にしようかと提案するが、一応みなで行こうということになり、彼女らに30分の買い物時間を与えて、男性群は109ビルの入口付近でまたまた子供たちと待機。Alvinがすぐ前の、インドネシアでもおなじみだと言う吉野家の弁当を買ってきて子供たちに食べさせる。John爺さんが孫のKatherynに「日本とインドネシアとどっちが好き?」と英語で聞く。「日本!」と言うので、「どうして?」と聞くと、5才の彼女の口からは「日本にはホテルがあるから...」。するとJohnが付け加える:「インドネシアではKathyは自分の家以外に泊まったことがないんだよ」と。それにしても5才でも外国語で自分の考えを言うのに驚かされる。 30分経ってみながそろう。「夕食に一緒に寿司でも」と誘われるが、家庭の事情でお断りして、みんなと握手して別れを告げた。 6/26(木) 今日は京王プラザのロビー。少し前に待っていると食堂から朝食を終えて次々に出てくる。22日からの4日間は彼等だけで行動し、ディズニーランド2日間の他、マイクロバスを雇って1泊で富士山にも行ったというが、雨でさんざんだったらしい。Alvinの希望で予定していた「横浜中華街→浅草近辺→お台場」の予定を再確認するが、横浜は遠いという意見が出て、まず浅草へ行くことにする。例によって3台のベビーカーと子供たちを引き連れての12人。ホテルを出るか出ないうちに空腹を訴える子供にChristinが朝食のバイキングで弁当箱に確保してきたご飯を口に入れたり、トイレの要望に答えたりで実にノロノロ歩行。エレベータの使える新宿南口へ辿りついたあとは前回よりも順調に山手線に乗り込み、上野で下車。 天井の低い上野駅構内でMelindaが「東京ばな奈」の売り場を見つける。彼女の憧れのお菓子。1個125円程度する小さなバナナの形をしたものを沢山買って、その場でみんなで試食。私も相伴になる。中心に種々の香をミックスしたバナナ・ピューレをソフトなスポンジケーキで長細く包んだもの。どういうわけかこれが特に東南アジアから来る人に人気のようで、よく聞かれる。でも試食はこれだけに終わらず、改札を出た中央ホールでも何軒か引っかかる。ここで銀座線に乗り浅草へ向かうつもりが、「アメ横」のことを話題にしたものだから、「行きたい」となって、そちらへ向かう。ここでも人によってペースが違い、バラバラだったのが、タコ焼き・タイ焼きの店には皆が吸い寄せられた。タイ焼きは彼らには少し甘すぎるとの評価。タコ焼きは「うまい」。Christinはご飯の詰まった弁当を取りだし、タコ焼きをおかずにして4人の子供たちの口へ運ぶ。子供たちも実際、際限なく食べる。食べるための旅であることを再認識させられる。でもHerlinaはあまり子供に食事を与えようとしないので、対照的。 上野広小路から浅草へ。雷門で、混雑の中へこの大グループを案内するので、はぐれたら宝蔵門の下で待つように言う。ところが雷門の陰でAlvin-Christinの家族はまた小ランチを始めて動かない。Jimmy-Herlinaの家族は混雑の中へ。しかも暑さを避けてアーケードのある新仲見世の横道へ。私は戻ってAlvinを促し、やっと全員が動く。はぐれかかりながらも新仲見世で合流。お爺さんのJohnも空腹の様子。周りはラーメン屋や寿司屋が多い。しかしインドネシア人は豚肉、生魚、麺類は苦手で、牛肉・ライスが常食とのことでまた牛丼屋を探す。幸い「松屋」が近くに見つかり、時間も遅かったせいかガラガラでホッとする。あれだけつまみ食いの連続だったのに、まだ結構食欲が残っていてビックリ。 しかし食べ終わって、時間も3時近くになり、今度はお台場へ...と思ったら、すでに知らせてあったお台場までの所要時間を確認すると、ためらう。子供たちも多いので「浅草花やしき」を提案して動き出す。ところが、近くに「西友」があるのに気付くとまた食料品売り場へ。明後日の帰国に備えておみやげに袋詰めのチョコ、菓子、ベビーフード、お茶などを漁る。日本のコーヒーも...と言ってキーコーヒーのパックを見ると何とインドネシアからの輸入品。 やっと外へ出たら、今度はMelindaがエルメス(Hermes)のバッグを買いたいのでデパートへ行きたいと言う。皆も妥協して松屋へ。ところが松屋にはブランドものはあまりない。銀座の本店ならあるだろうとの返答で、今度は銀座へ。ここで長老のJohnとやや太り気味のTiffelynが疲れたのでホテルへ先に帰りたいと言い出す。とりあえず皆で銀座線に乗る。途中「銀座組」が銀座で降りて私が案内し、「ホテル組」はそのまま終点の渋谷へ行き、タクシーを拾ってもらうようにした。 銀座・三越にもエルメスは入ってなく、ソニービル近くのエルメス銀座店に。ここならお目当てはあるだとうと思ったらここでもないと言う。詳しく聞くとビルキン(Birkin)の30cmか35cmのハンドバッグだと言う。これはヨーロッパでも手に入りにくい商品だそうで、店員に賄賂を渡して手に入れるほどのものだとか。ネットで見ると何と最低でも100万以上もするシロモノ。見つからないわけだ。 近くに不二家を見つけた子供たちがアイスクリームをねだって小休止。東京駅構内にある「東京ばな奈」にもまた寄りたいというので、東京駅まで歩いて新宿へ戻ることにする。東京駅構内にはあちこちにその小さな店がある。なかなか芸の細かい販売戦略を施す店舗のようで、店ごとに、そこでしか手に入らないちょっと味と名前の違う「東京ばな奈」を用意して限定販売で集客を促すやり方。それが当たって客が列を作り、それぞれの店の前には「最後尾」の看板を掲げて持つ売り子がいる。MelindaやHerlinaが特に「熱心」で、おみやげ用に、持てないほどの箱詰めを買う。 そのまま中央線で新宿へ。この家族も大人全員の他、Alvinの長女のSahanlene(11才)もスマホを持っている。車中では例によって私のiPhoneがhot spotになって何と5台のスマホやiPadを同時にネットにつなぐ。 新宿に着いたら、高島屋にも案内してくれないかと言う。口で言えばいいと思ったが、南口前が工事中で入口が分かりにくいので案内する。到着すると、早速「Food courtは?」と言うので、デパ地下へ。「なぜメロンが1個16,000円もするの?」と聞く。端の方にテーブルとイスのコーナーがあり、「ここではWindow shoppingだけ」との宣言にもかかわらず、焼き鳥やサバの味噌煮などを買って、ご飯の弁当を取り出して、また子供たちのディナー。私は、聞かれるまま大人たちと簡単な日本語の挨拶の練習。スミマセン オヤスミナサイ コンニチワ アリガトウ...などとやっていると長女のSahanleneも興味を示し加わる。しかも一番上手だ。同時に彼女はスマホを取り出してメモ帳に器用に記録していき、私に確かめる。一段落したので、帰り方を細かく説明してガイドを終わりにした。<このページ上部へ移動>
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ユダヤ教の正月休暇(9/25-)を利用して、本州の半分をレンタカーでドライブする目的で来日したイスラエル人家族をガイドした。東京は9/26とドライブ後の10/11からの2~3日のみ。6か月前から計画を立て、日本の左側通行、右ハンドルに挑戦すべく、スマホのナビも最新のものをそろえたと言う。東京は電車での観光だが、明日は東京駅で日産ティーダを借りて箱根、その後上に書いたコースで東海、関西、四国、中国をRoy(46)が1人で15日間かけて走り回ると言う。 家族は奥さんのAmit(44)と長女Mika(12)に次女Alma(10)。英語はイスラエルでも就職には絶対必要だそうで、中学校でも必修でまだ中一のMikaも何とか話す。Almaはヘブライ語だけ。Mikaという名は日本人女性の名前でもある...と言うと、「日本マンガの主人公も『ミカ』だったよ...」とよく知っている。しかしイスラエルでは、これはMichaelの短縮形でもあり、男性にも付けるようだ。 ホテルのロビーにいると外での朝食の帰りらしく、定刻の9:00に外から飛び込んできた。早速築地市場へ。すでに全員の地下鉄(メトロ・都営両用)1日券を持っている。日比谷線・築地から歩くが、場外市場で引っかかってしまって場内へ行くのに時間がかかる。寿司はAlma以外は好きだそうだが、Royもタコの大きな現物を見るのは初めてだと言う。全部の魚類貝類が整理されて1ヵ所に集まっている場所はないのかと聞くが、この施設は昔のままのもので、無秩序で、移転改革計画があっても汚染でトン挫している事情も分かってもらう。 場外市場も行こうとしていたら、小さいAlmaがグズり始める。Itineraryに入れていた「お台場に行きネコカフェに早く入りたい」と訴える。こうなると子供優先になり、早速汐留からお台場へ。一応新橋まで戻ってユリカモメの先頭車両の先頭に陣取る。快晴で景色も良いのでみな興奮気味。「台場」でAquaCityに飛び込み、ネコカフェへ。客は他に誰もいない。子供だけで入れたいというがダメと言われて、700円追加してRoyがしぶしぶ一緒に入り、中の脇の椅子でスマホを見ている間、2人の子供はネコをからかう。ここは1才前後のネコばかりを集めているらしく、猫が若いので反応が良いそうだ。確かにネコも人間も同じ動物のようにじゃれ合って動き回っている。母親のAmitと私は外から観察。 彼女にイスラエルの様子も聞いてみる。テルアビブの近くのマンション住まいのようだが、この夏はガザからのロケット砲の警戒警報がよく鳴って大変だったという。砲弾が発射されるのを感知すると警戒のサイレンが鳴り、みながシェルターへ逃げ込むのだそうだ。5分くらいで解除されるが繰り返されるとしんどいようだ。私も70年前の日本を思い出して話して聞かせ、共感もした。でも「イスラエル軍はアメリカや他国の軍事援助もあって世界最強だ」と自負心も見せる。 30分ネコと戯れて満足げの表情で子供たちが出てくる。次はイヌのコーナーでガラス窓にかじりついて離れない。しかし今度は大人の番というわけで、トヨタのMegaWebへ。早速シミュレーターを見つけた父Royが「タダか?」と聞く。他にお客がなく、4人同時にハンドルにしがみつく。10才のAlmaも慣れたもの。母親より「運転」がうまい。 観覧車に乗って東京を見ようというので、全員で1つのゴンドラに。1台3,080円は安いとRoy。ロンドンの観覧車は1人分でその値段だったとのこと。快晴で東京のタワー2つともよく見え、新宿、丸の内、汐留の高層ビルがよく見えるので説明に便利。あとで行く予定だった都庁展望台を止めることにする。 降りてトヨタの最新車、燃料電池車(FCV)を見る。内部構造がよく見えるモデルもあり、排気ガスゼロで、水素ボンベを2つ積み込んで発電しながら500km走り、700万円というのでRoyは興味津々。子供たちはまた3面鏡のようなディスプレイのついたシミュレーターにしがみつく。 近くのスターバックスでサンドイッチとコーヒーでランチ。明日からのドライブのアドバイスをする。Royのことも聞いてみる。祖父がロシアからイスラエルに逃れたユダヤ移民だったという。しかし彼はあまりユダヤ教に関心がなく、食事規定(Kosher)もまるで無視。アウシュビッツに行ったこともなく、行きたいとも思わないとのこと。むしろイスラエルではタブーのドイツへ旅行するのが好き。「風景もすばらしいし、人も良い」とあこがれる。もちろん夫婦とも兵役はきちんとこなした。だが40才になれば兵役は免除だとも言う。こういうイスラエル人もいるのが面白い。このあとクラシック・カーのHistory Garageと、Venus Fortもしっかり見る。 さらに未来館へ行く予定だったが、疲れ気味で止めて、今度は対照的な古い町浅草へ。仲見世をお菓子の味見をしながら進む。海苔を練り込んだ醤油煎餅が人気。とにかくお寺より味覚の人たち。また10才のAlmaが不機嫌の様子。ヘブライ語で泣いて何か訴えている。Royは「たくさん見過ぎて頭が混乱した」と言っているという。彼女は敏感で頭の良い子らしく、行ったところは全て覚えていてあとで話すようだが、許容量を超えたらしい。母はジッと抱きしめて落ち着くのを待つ。姉のMikaは「妹がこんな態度で恥ずかしい」と私に言う。 そろそろホテルへ戻った方が...と帰途に着く。が、ここでまたRoyから上野にも寄ってくれないかとの要望。「Almaには無理じゃないか」と言っても、「ちょっとだけ」というので、上野へ。 駅を出ると、夕暮れでネオンがきれいとみなが歓声をあげる。アメ横へ回り、串刺しのパイナップルを頬張り、パチンコ屋をちょっと覗きこんだり、カラオケ屋に興味をもったりしながら広小路に出る。しかし時間も遅くなったし、ホテルへの帰路を説明。明日からの安全運転を確認し、そこで別れを告げた。
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