オーストラリアはメルボルンからの若い教師夫婦をガイドした。夫のSは生まれも育ちもメルボルンで12〜18才対象の高校で国語としての英語と外国人留学生の英語教育(ESL)を担当する25才。奥さんのJ(ジェマイナ)はシドニー生まれブリスベーン育ちだが、やはり高校で英語とメディアを教える30才。 2人は日本で英語を教える友人同士(オーストラリア人同士)が大阪で結婚式をあげるというので、それに参列するために来日したが、ついでに東京と韓国を回ることにしたという。暮れの12/23に式が終わって関西を観光したあと12/31に東京へ。2人ともスポーツ好きで1/1にサッカー天皇杯の決勝を見たいとメイルで言ってきていたので、メイルでコンビニでチケットを買う要領を教えておいたので、それはうまく行ったと喜んでいた。またSは2メートルを越える大男でずっとバスケットの選手をやってきたので、日本のプロバスケットの試合を見たいとも言っていた。そこで1/5の18:00から所沢市民体育館で行われる「埼玉Broncos対仙台89ers」を案内することになっていた。 約束の10時丁度にホテルの狭いロビーに現れた。とりあえず東京を眺望しようと都庁の展望台へ行くことにして大江戸線・大門から都庁前へ。エレベーターは一部補修中だが、待ち時間なしにすぐに上がれる。富士山は見えないが、良く晴れて展望は良い。Sはアニメも好きで、正月に2人でジブリ美術館にも行っている。だから窓からの景色とともに売店のアニメ・キャラクターにも関心を示す。 例によって隣のNSビルの巨大振子時計を経由して新宿駅へ歩き、原宿へ。元日と違って臨時ホームは使っていないが、週末でもあり駅から明治神宮参道への混雑はひどい。しかし元日のような人間の渋滞はなく、一応本殿まで止ることなく進む。ただ本殿前は賽銭を投げ込む場所があり、人が何重にも出来て、本殿には近づけない。横の参道にはおみくじのための臨時のキオスクが並んでいて、不運なおみくじを結びつけた紐の列が見える。「幸運を祈りに神社に来ているのに、どうしてお金を出してわざわざ不運なおみくじを引くのか?」とSがけげんそう。Jは鼻水が止らないようで盛んに鼻をかむ。花粉アレルギーにしては早いと言ったら、メルボルンにない寒さが鼻を過敏にさせているのでこれから行くソウルが心配だという。保温効果もあるのでマスクを勧めてみたが、不自由そうでイヤだという。それに彼女はやや太り気味で疲れやすいようなので、隣の代々木公園に行ってベンチでしばらく休憩。 竹下通りはいつもの混雑。ここでもアニメ・キャラクターの店にひっかかる。2人とも大きな身体なのに小さな人形が気に入り、いくつか求める。まもなく急にお腹がすいたという。やはりお好み焼きが良いというので、デザイン・フェスタ裏のさくら亭へ。週末だが待ち時間なしで席があったが、この段になって彼女が麦のアレルギーだというのでお好み焼きがダメになった。しかしたまたまメニュにある焼きぞばには麦は入っていないというので、彼女はそれに切り替える。Sと私は普通のお好み焼き。ここに来る途中で、オーストラリア人とVegemiteの関係が日本人と納豆との関係に似ているという話をしていたこともあり、彼は納豆のお好み焼きを注文。納豆が糸を引くのを不思議がっていたがペロッと平らげた。 表参道は元日の屋台は全て取り払われていたが、混雑は同じだった。次はJRで秋葉原へ。AKB48に興味があるというが、ドンキホーテ秋葉原店8階の舞台公演は行われない日だった。秋葉原駅ビル1階のAKB48 Theatreというのは大きなスクリーンを見ながら食事がついて2700円だそうで、「スクリーンだけでは高い」となる。とりあえずアニメ関係やゲームの館をいくつか回る。少しテレビゲームにも興じる。 そうこうしているうちに4時を回り、西武新宿から新所沢のバスケット試合場へ。夕食を取っている暇はないと思われるので、コンビニでおにぎり、お菓子と飲み物を買って試合休憩時間に食べることにする。麦アレルギーのJaminaもおにぎりならOKだが、中身の具の説明が英語で書いてないので説明が必要。しかし彼女も食品の袋に貼ったラベルの「原材料名」の中に「小麦(粉)」という漢字があると読めるようになっていた。 新所沢にやっと着いたときには試合開始時間6時の10分前。やむを得ず所沢市民体育館までタクシーに乗る。5分で到着。2000円の2階席をその場で買い、席に着いたとたんに試合が始まった。プロバスケットはプロ野球やサッカーと違って、あまり人が集まらないので簡単に見られる。席が込み合うこともないが、アメリカの野球場のように大音響で激しいリズムの応援音楽(?)が鳴りわたり、チアガールたちが踊りまくって、なかなか華やかだ。それに10分単位のゲームが短い休憩を挟んで4回繰り返されるだけだから間延びがすることもない。Sは自国でバスケットの指導もしているだけに、観察が細かく、私の入場料も出してくれていながら、逆に私をガイドしてくれる。やっている選手には外国人が2人くらい常に含まれているが、観客では彼らが唯一の外国人のようだ。結果は90-75で仙台が勝ち、地元の埼玉は完敗だったので、試合後埼玉のキャプテンがインタヴューを受けて、自分たちの失敗を認め観客に謝っていた。それを聞くとJaminaは「外国のこのような試合では、選手が観客に謝ることなど考えられない」と驚いていた。更に試合後、コートのまわりに観客が集まり、選手全員が一回りして観客たちとハイタッチをしていく。我々もその中に入ったが、外国ではまずないことだそうで彼らには驚きだったようだ。 試合が終わって外に出ると、郊外の夜の寒さが身にしみた。彼らは明日は朝7時の飛行機で長崎へ行くという。そのまま西武新宿線で高田馬場まで行き、山手線のホームを確認して別れ、彼らは浜松町へ向かった。
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オーストラリアからの初来日の仲の良い50代の義理の姉妹。H(brunette)はブリスベーンの西100キロにあるToowoombaという田舎町からさらに奥に入ったGowrie Mountainに5エーカーの牧草地を持ち、2年前に癌で亡くなった夫のあとを引き継いで土地の一部に植わっている58本の果樹の面倒も見ているという。しかし彼女は近くの病院でパートで助産婦(midwife)もしている。弟も7年も日本に住んだことがあり、4人いる息子の一人も滋賀草津市で2年半も英語を教えていて、今回はその息子に会いに来た。また一緒に来たHの従姉のD(blonde)はToowoombaで家庭や事務所などの清掃を請け負う会社を経営していて、夫は共同経営者だが部下だそうだ。彼女がCEOってわけだねというと笑っていた。 今回は次の日に都内を巡るバスツアーに参加を申し込んでいて、そのコースに入っていないところを案内してほしいと言ってきていたので、一応上野と原宿界隈を予定して彼女らも納得していた。 前日は夜遅く着き、成田からホテル直通のリムジンバスから降ろされて、まわりを歩くこともなく寝ただけというので、近くの増上寺や飲食街を見せて浜松町駅へ。まず、JRパスを交換して旅行中の指定券を全部予約したいというので、上野駅のJRパス発行カウンターへ行く。すでに大勢の外人客がいるが団体のようで一カ所に固まり、別の窓口で待たずにJRパス(2週間用)は発行してもらえるが、次々にお客が来るので、指定券は一般の「みどりの窓口」へ行ってくれという。そこにもすでにかなりの列。隣から回されてきた外人も多い。見てると、ここでは窓口も英語対応が十分ではないので付き添う。「乗り継ぎの時間がじゅうぶんあるのか?」と聞かれているのに分からなかったりする。彼女らのJRパスには25-4-7と期限が大きく刻印されているが、この25/4を4月25日と読んでしまう。日本の役所の元号制度を説明するが、国鉄が民営化されてずいぶん経つのにまだインフラが旧態依然としていることを表していると説明せざるを得ない。 次にアメ横へ。小雨が降り始めるので、市場の屋根のある道を進む。彼女たちはショッピング好きだ。派手なデザインのシャツ、バッグ、革製品の小物などの店に次々に入る。Dが夫への土産とかで6000円もの小さなビルクリップ(札挟み)を見つける。ずっと探していたものだという。知らぬ間に御徒町駅前へ。写真を撮りながら松坂屋のデパ地下をみて、不忍池へ。小雨の中だが池の真ん中を抜ける遊歩道のサクラは見事。雨でも月曜日なので博物館は閉鎖され、入るわけにはいかない。そのまま清水寺を見上げて説明しながら、大仏から、東照宮へ。数日前にイスラエル人をガイドしたときには静かだった参道も、今日は食べ物の屋台が並び大混乱。五重塔もよく見えない。やむなく外へ出て上野動物園の方向を見ると、月曜なのに春休みのせいか開園している。パンダを見たことがないというので、入ることになる。丁度昼時でパンダも竹のランチを手当たり次第口に入れている。小雨のせいか意外に観客も少なく写真もゆっくり撮れる。オスとメスが別の広場に入れられているのを彼女らは不思議がる。動物園の中にある東照宮の五重塔もここではゆっくり見られる。オーストラリアのHの所有する牧草地でもカンガルー、ワラビーやBrown snakeと呼ばれる毒蛇を来日前の先週も見かけたそうで、動物には関心が高い。変わった猿やオーストラリアにも居るという九官鳥には大声で話しかける。 外へ出てすぐ近くの小さなうどん屋で焼き鳥、肉うどんとコーヒーのランチ。最初は箸に慣れようとするがなかなかうまく使えず、音を出してフォークでうどんをすする。でもスープも飲み干して満腹とのことでホッとする。 今度はJRパスを使って原宿へ。まだわずかに雨が残るが傘をさすかどうか迷う程度。神社の落ち着いた空気は気持ち良さそうだが、彼女らは積み上げてある酒樽やワイン・バレルの方がむしろ関心事。仏教と神道の違いなどを質問はするが、主に写真を撮ったら次へという感じ。結婚式も見当たらない。 しかし竹下通りはつかれたように興味を示す。コスプレやその関係の店などを見るだけでなく、ショッピング目的でいくつかの店に入る。特に鞄と靴。MOMOという店ではちょっと変わったブーツを2人で3足も買う。ちょっと見ると10代か20代くらいの女性向きのように見えるデザインでも、店の人によると、外国人女性は老婦人でもどんどん買っていくという。50代の彼女らも実際試着するのを見ると慣れない私の目にも違和感(?)がない。さらに原宿通りの先の店で、Dが男性用のジーンズの上着を選んだ。男性店員に、夫と同じくらいの背丈だというので、試着を頼み、気に入ってお土産に。店員も驚きながら何着も試着。 更に頼まれてオリエンタル・バザールへ案内。ここでも時間をかけていろいろ物色。変わった花瓶、カップなどを買ったあと一度出かかったのを戻ってもう1つ買い足した。それは先ほどから随分眺めていて諦めたように見えたものだったが、65,000円もする金色の塗料を塗られたブロンズ製の大きな人形だ。ちょんまげと袴をつけ、槍と杯を手にして「黒田節」を踊る侍の5キロもある重い人形だ。航空便(EMS)で送ると保険料も入れて12,000円もかかると見積もられて、手で持って帰るという。なぜこれを? というと、「オーストラリアに帰ってこれを眺めては日本を思い出すの...」と言う。 帰りに酒屋のよって、ウィスキーのソーダ割りの缶やコカコーラの大瓶を買った。2人でホテルの部屋で乾杯をするのだそうだ。そのまま地下鉄で大門まで送り、別れた。 <次ページへ>
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