ニューヨークはマンハッタンの真ん中セントラルパークのすぐ東側75番街に住む新婚2年目の共に32才の若夫婦(AmyとAlex)を案内した。Alexは保険会社のコンサルタント、奥さんのAmyは高級デザインの衣服などを扱うPolyvoreの販売戦略担当。たまたまAlexの出たNew York Universityの大学院(MBA)時代の学友夫婦(DanとAllison)が東京に来ていて、ペニンシュラホテルに泊まっているので、一緒にガイドしてくれないかと前日になってメイルが入ったので承諾し、皆で京王プラザのロビーに9時に集合することにする。Danもロスアンジェルスで金融関係の仕事についていて、Allisonもやはりサンタモニカでスキンケアの化粧品を扱うジュリーク(Jurlique)(日本の「ポーラ」系列)という会社のSenior Marketing Directorだという。 みなpunctualで時間通りに5人がそろう。コースは会ってからの相談としていたが、とりあえず築地市場に行く。都庁前から22分で築地市場へ。土曜のせいでもあるのか正門から長い列が出来ている。それでも市場の奥まで来る人はそう多くはない。4人とも刺身や寿司を常食の一部にしているようで、実に詳しい。マグロはともかくウニ、トロ、イカなどはもちろん、コハダまで日本語で知っている。しかしカズノコは知らない。昆布に魚の卵をまぶしたものに興味を示す。1匹2,500円と書かれた大きな伊勢海老を見て、「何と小さい!」と言う。アメリカの伊勢海老はずっと大きいのだそうだ。場内の寿司屋に出来ている行列を見て、Lonely Planetのせいだと言うと、「寿司大」「大和寿司」だろう...というくらいに勉強もしている。Amyが黒地に「築地市場」と書かれたTシャツを叔父の分まで入れて3枚も買う。 次に浜離宮のTea (Ceremony)はどうかと提案。Amyが、ホテルのTea Ceremonyだと思って、反対。でも浜離宮の様子を話すうちに「やっぱりみなで行こう」ということになる。そして行ってみると、築地の喧騒のあとで落ち着いた気分を味わえてとっても良いという。池からはボラ(?)が飛び跳ねてみなの注意を引く。お茶は500円ということは前もって言ってあったのだが、いざ中島の茶屋の前に来ると、やや高いと思っている様子。ちょっと迷っていたが、ここも「入ろう」ということになる。興味から、みな正座を試みるが30秒ともたない。すぐしびれてくるという。私も得意でないことを彼らが知ると少し安心した様子。赤い絨毯の上に5人が1列にならんだままでは皆が見えないので端から説明するのは難しい。そこで前の畳の上で説明していると給仕がいい顔をしない。英語の説明をケースに入れて1人に渡せばそれでいいではないかという感じ。でも彼らは読もうとはしない。 東京湾沿いの小山に上がり、レインボーブリッジを望む。するとAlexがお台場に行きたいと言い出す。みなもそれに同意。早速近くの水上バス発着所へ。残念ながらお台場行きは今出たところだという。仕方がないので、ゆりかもめで行こうと新橋へ向かう。今や葉ばかりになった梅や桜の中を通り抜けながら、サクラの話になる。Alex夫婦の居るセントラルパークも桜の名所なのだそうだ。セントラルパークには貯水池があり、その周りに桜がギッシリと植えられ、彼のジョギング・コースだとか。道理で桜の季節には日本でニューヨーカーには合わなかった...と言うことになる。「ゆりかもめ」へは汐留の方が近いが、途中黒川紀章の中銀カプセルタワーを見せるため新橋方向へ。古いとはいえ、取り外し、移動が可能なカプセル・アパートメントには目を見張る。 ユリカモメでお台場海浜公園へ。人工の浜辺で結婚式をしている。白やピンクのレースの服で着飾った若い女性のグループが新婚カプルを取り囲んで雰囲気を盛り上げようとしている。AmyとAllisonが近づいて日本語で「おめでとう」と言って、一緒に写真を撮る。ビーチの半分くらいをテントのようなもので囲って見えないようにしてビーチサッカーをしているらしい。おかげで景色が台無し。自由の女神像へ進む。ニューヨークの「本物」を見慣れている2人のニューヨーカーは神妙な目で見上げる。Alexが女神が抱える本に書かれている独立記念日の日付を読む。 アクアシティの猫カフェのことを言うと行ってみたいという。ガラス越しに部屋の中が見えるので写真を撮る。そとのカゴで売られている猫の値段にビックリ。アメリカではネコを融通する組織があって、普通はタダで貰うらしい。22万とか書かれた脇に月賦の場合の1回の支払いが8,800円などと書かれている。1匹の価格が8,800円でも高いと驚く。 ひなびた店で日本食が食べたいと言うが、あたりにはそんなものはないし、すでに1時を回っていて空腹感も出てきたようで、そのまま5階の食堂街で日本食を食べる。刺身や天ぷら、焼肉など何でも注文できるので各自が勝手に注文。彼らは一応うまいというが、あまりうまいとは言えない。 隅田川クルーズのことを話すとみな興味を示す。早速近くの海岸の船着き場へ行き調べる。うまい具合に10分後に浅草行きが出るという。ただ総ガラス張りの宇宙船のような新型船「ホタルナ」というやつ。お台場ー浅草間1人1,520円と少し高め。皆それでも良いというので、早速切符を買って乗船。私も初めて乗ったが、土曜日なのに料金が高めのせいか、乗客も多くはない。今まで、このタイプの水上バスは外から見るだけのものかと思っていたが、内部もサロン風で冷房もきいて、なかなか快適だ。操舵室も少し高めにあるガラス張りの部屋で制服姿の舵手が良く見え、外には大きなバックミラーのような鏡なども取り付けてあり、水面すれすれからの視界にはほぼ水と空しか入らないので、ちょっとした宇宙船気分。客室も周りにソファのような長椅子がある以外には中央には余裕をもってテーブルが置かれ、その周りにまばらに椅子が置かれているだけで、ゆとりの空間を楽しめる。彼らもそれぞれ満足そうな笑顔。電車よりはるかに快適だという。途中は鉄とコンクリートで殺風景だが、方々で水門の奥に広がる運河網を確認したり、違った色に塗り分けられた橋を通り抜けているとあっという間だ。 ノンストップ45分で浅草へ。Philippe Starkのオブジェは船中で話したので、降りてすぐに雷門から仲見世へ。一通りいつものように説明しながら、五重塔、みくじ、本堂や諸堂のところを抜けて、六区の庶民のたまり場をみせる。まだ4時前後だが、通りの居酒屋の前には臨時のテーブルが置かれ、ビールのジョッキを傾ける人たちが続く。ベトナムと違ってここでは道路に座って一杯やる人はいないね...とAmy。更に進むとダンゴだけを売る店の前で、Amyが「オモチだ!」と歓声をあげる。午前中から言っていた望みがやっとかなったようだ。大福餅、柏餅、桜餅、ヨモギ餅、串刺しダンゴなど次々に買う。ホテルに持って行って食べるのだそうだ。串刺しダンゴは初めてのようで、まず2本を買って1玉ずつ「回し食い(?)」している。食いつき方にも個性があり、面白いので写真に撮ったが、これは彼らの自尊心もあるので、ここでは公開しません。奥さん方の力かもしれないが、こんな甘党の若いアメリカ人カプルたちも珍しい。 薄暗くなってきた細い通りには赤提灯が浮かぶ。でも彼らは「こういう景色を見たかったのだ」と喜ぶ。途中和太鼓の店、神輿や祭り道具の店などを覗きながら、田原町へ出る。 地下鉄銀座線に皆で乗り帰途に就く。ホテルの関係でDanとAllisonには銀座で、AlexとAmyには新宿で別れを告げる。別れ際にDanから妹が間もなく来日するのでまたガイドをしてもらえないかと要請を受ける。
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Wanlopさん(57才)はバンコクに住み、タイでもっとも著名なチュラロンコン大学(Chulalongkorn University)と、大学への予備校などで、もう27年も英語を教えている教授。一緒に来たWongsatitさん(30才)はWanlop教授の研究室に雇われている秘書兼助手のような仕事をもう17年も続けている。Wanlopさんは20年前に小田原での英語研修会に指導者として来日し、1ヶ月滞在したことがあるという。 今回は休暇で出来るだけホテルでボーッとして過ごしたいとのことだが、職業柄英語の教材も探したいというので、以前英語を教えていた私にお鉢が回って来た。 15:00pmに京王プラザホテルで会う予定だったので、朝9時すぎに確認の電話を入れて、朝のうちに時間があったら、隣の都庁展望台でも行ってみたらどうですか...と言ってみたが、会ってみたらそのままホテルでボーッしていたと言う。 今日の予定は、本屋と浅草ということだったので、まず新宿の紀伊国屋に向かう。途中、日本で国内に電話を掛けるにはどうするかと聞かれる。携帯はそれぞれ持っているが日本のではない。WiFiは事実上ホテルでしか使えないし、日本の国内電話には向かない。だからテレホンカードをコンビニで買うことを勧めて、実際に電話ボックスでカードを入れてかけ方を教える。 ついでに西新宿の高層ビル街から食堂街、思い出横丁、西口から東口へ抜ける近道のトンネル、歌舞伎町の危険区域などを説明しながら巡る。明日から自分たちだけで動くことを考えて、助手のWongsatit君が携帯のカメラで曲がり角ごとに目印の写真を撮っていく。 タイの人はいつも同じような気候の中で暮らしているせいか、ゆっくりしている。「あなたの足の10分は私たちの20分だね」などと言われて、老人の私の方がどうもせっかちで、つい早くなってしまうのを反省させられる。 やっと目的の紀伊国屋に到着。日本の学生が使う英語の参考書を見たいというので、該当する8階へ。しかし参考書の問題の指示が日本語なのでWanlopさんは不満。選択式の問題ならというので「センター試験」の過去問を求める。さらに日本の大学入試のやり方を説明すると、むしろ国立大の二次試験問題(特に東大)や難関私大の過去問に興味を示し、それらも求める。だが物価の安いタイから来て、1冊3000円以上もする値段にもビックリ。また医大の問題や模試にも興味を示す。そのあと洋書の売り場に移ってTOEFL、TOEICやUSMLE(米国医師国家試験)、USCPA(米国公認会計士)試験などの対策本も求める。つまりタイでの英語教育も入試対策が重要テーマのようで、裕福な家庭の子女で日本やアメリカへの留学希望者に対応する必要から、入試関係の教材研究も必要になってくるようだ。 夢中で物色している間にWanlopさんは足が痛くなったらしく、とにかくどこかに座りたいと言い出す。実はそのあと神田にでも行って本屋街を歩こうと計画していたのだが、それどころではなく、夕食にしようということになった。 天ぷらなどでは? と言うとOKというので、近くの「つな八」へ行く。夕食でも1,980円からあって、比較的すいている。辛いのが中心のタイ料理に慣れた舌には白米のご飯は馴染まないようなので、細かく刻まれた漬物をまぶすことを教えるとうまいと言って全部食べた。 外へ出るともう暗く、ネオンの渦。Wongsatit君が帰り道は覚えていると言うし、2人でもう少しその辺をブラブラしてからホテルへ戻るというので、そこで別れた。会ってから3時間半の短いガイドだった。
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