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退職後の旅行を楽しむ豪州からのカプルを案内した。夫Hung79)は電気電子技術者、マレーシア生まれで会社勤めのあと、豪州へ移民、メルボルンの専門学校で教えて15年前に退職。高齢だが毎日5km歩くのを習慣にしているとのことで、歩いても疲れを知らない様子。妻のIvy72)は家庭科の教師を長くした人。マレーシアで結婚して息子をオーストラリアへ留学させ、自分たちも移民した。

1日目(11/5)9時にビルの20階にあるホテル・ロビーで会う。Hungは日本の庭や自然が見たいというので、まず六義園へ。早朝なので人がほとんどいなくて静か。今は菊の季節。ここも菊がきれいに置かれている。浜離宮の3倍以上の広さだし、大樹も多く、広い池も趣がある。滝の音、小鳥の鳴き声が響き渡る。よく外人に聞かれることだが、なぜ松の幹にワラの帯が巻いてあるのかと言う。オーストラリアではワラではなく、アルミ板で幹を帯状に巻くらしい。ポッサム(Possum)が木に登るのを防ぐためだそうだ。大名屋敷の庭園には庭師が入ったが、その庭師をスパイとして利用して幕府は大名屋敷を常に監視した話をすると驚く。今のNSAの盗聴問題の江戸版という話になる。

お茶屋のところで一服。浜離宮と同じように茶菓子が付いて500円だが、お菓子は要らないというと200円にしてくれる。Hungはお茶好きでおかわりをする。抹茶も買いたいという。2100円で45杯取れるという缶入りを売っているが、茶筅を使うだけでなく、網で濾すと玉ができない...と丁寧に教えてくれる。紅葉はまだだが、こずえに少し黄色と赤が見える。

駒込駅へ戻って今度は上野へ。Ivyがお土産を買いすぎたようで、それを入れるためのスーツケースを買いたいというので、アメ横へ。奥さんは65,000円のスミソナイトが良いというが、Hungは同じ大きさの4,800円のものを主張。しばらく物色後安い方を買い、夫が運び屋になる。ランチの時間になる。夫は寿司、刺身がダメ。一方妻は寿司大好き人間。そこで寿司とウドンが食べられる店を見つけて入る。Ivyはチラシ寿司、Hungはウドン。ところが彼らも辛党で、ウドンには真っ赤な層なるほどの七味唐辛子をかけて、Ivyは生姜を大量に追加注文。やっと満足顔になる。食後上野公園を散歩。妻は3年前に団体で来たことがあるとのことで、サクラの上野を覚えている。夫は大のクラシック音楽愛好家で、東京文化会館裏にTokyo Symphony Orchestraと書かれた東京交響楽団のバスが止まっていると目の色が変わる。

妻はキルトを作るのが趣味で、どこからか聞いてきたキルト・パーティ(Quilt Party)という店に行きたいと言う。iPhone で調べると市川にあるので、行ってみることにする。ビルの2階で看板もなかったが、やっと分かった。物色に時間がかかりそうなので、Hungと私は近くの喫茶店で談笑しながら待つ。マレーシアからなぜオーストラリアへ移住したのか聞いてみる。マレーシアはマレー人の世界で、中国系の人は差別されるという。大学入試もマレー人が優先され、就職も同じ大学卒でもマレー人が優先的に選ばれるらしい。だから息子もオーストラリアに留学させ、マレーシアから仕送りをしていたがきつかったとのこと。当時は移住がし易く、自分たちもオーストラリアへ移住を決意。オーストラリアでは収入も増えて、仕送りも楽になったそうだ。40分後にキルト店へ。丁度奥さんが材料や本を買って会計を済ませているところ。隣の漬物、味噌の店で福神漬、粕漬、塩分半分の味噌などを仕入れて、買ったスーツケースは一杯になる。そのあとは夫の希望で新宿の東急ハンズへ行き、工具や部品、電子ロックなどを買ってサザンテラスで別れる。

2日目(11/6水)。今日は築地魚市場へ行くことになっていて、早めの8:30amにロビーで会う。いざ新宿駅で大江戸線に乗り込むと電車が動かない。先へ行く電車で誰かが非常ボタンを押したので点検中とのこと。停車した車内はだんだん込み合って来て窮屈。でもこれもめったに出来ない経験ということで理解してもらう。とても混んで大変なのに79才のHungが自分の前に空いた席を若い女性に譲る。やっと電車は動き出し、15分の距離を40分もかかって築地市場へ。しかし2人とも意外に元気で明るく、ホッとする。

市場では大ヒラメ(flounder)を見つけたHungが大声をあげて親しみを表す。豪州でも海底の砂地でジッとしている保護色で分かりにくいflounderに、彼らが潜ってこっそり近づき、上からナイフで突き刺して捕獲するのだそうだ。市場を出て波除神社へ歩く。丁度酉の市。すぐ前の松村鰹節店でIvy1kg単位でパックにつめて売っている鰹節を買う。今日もHungは運び屋。今度はIvyが寿司を食べたいというので、寿司清へ。Hungは寿司がダメなので、2分だけをとる。ダシ巻きはHungも食べられるので、それは2皿とも彼が食べる。しかしそれだけでは可哀そうなので、イワシなどを表面だけ焼いて焦げ目をつけてもらう。Hungも食べてみていけると言う。それに味噌汁はHungも大好物で、3杯もおかわり。築地で寿司嫌いの人でも何とかなりそうな気がした。一方Ivyは「これを食べたからにはオーストラリアの寿司はまずくて食べられないだろう」と心配する。

銀座。Hungがソニービルへ行きたいという。彼はヘッドフォンや音に興味がある。ハイレゾ(High-Resolution Audio)を試聴室で聞く。MP332倍の細かさで細密に記録した音源からの音だそうだが、私には違いが分からない。画面の縦横とも2倍のドットや走査線で写しだす4Kテレビの方がハイレゾらしい感じ。ここでも付属のショップで無線(Bluetooth)で鳴らすスピーカーや他の機器のアダプターなどを買って、持ち物を増やす。

原宿。明治神宮は「菊の紋」関連で、菊花展が六義園より大がかり。菊の葉に赤い●をつけたものがあり、入賞作かと思って聞いたら、単にグループ分けのしるしだとか...。七五三で着飾った女の子には外人が注目。「竹下通りに行きたいか?」と聞くと「現代の若者の場所には興味がない」と言う。が、「Daisoがあるよ」というと「行きたい」となる。実際、一旦入ると時間がかかる。アルカリ電池から包丁まで、またかなり仕入れる。いざ手に持つと「果たしてメルボルンまで持っていけるだろうか?」と心配そう。夕食を一緒に...というので、適当なレストランを探していくつか当たるがどれもお気に召さない。では天ぷらでもというので、新宿の「つな八」へ。雰囲気も気に入って、安いコースをとっても、彼らは「よく連れてきてくれた」と満足そう。彼らの思い描いている場所を推定するのが結構ややこしい。醤油をかけないで白米を沢山食べることができる外人は少ないような気もするが、Hungは白米のまま3杯もおかわり。中国系の人は少し違うようだ。

お腹も出来て、ホテルの見える新宿南口あたりまで案内し、帰国の日の成田エクスプレスを予約してお互いに別れを告げた。
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フランスはリヨンからの193cmの大男Julien36)をガイドした。大学でComputer EngineeringBusiness Administration2つ資格を取ったあと、13年勤めたコンピュータ技術者の仕事を辞めて、今小さな技術関係のベンチャー企業を買い取り、もう1つの資格も生かそうと、両方がつながるビズネス経営を企画している。だからこの仕事から仕事へ乗り移る間の「休暇」を利用して、かねて関心のあった日本に来たという。リヨンには奥さんと4才と2才の息子がいるが、奥さんは魚アレルギー、長男はピーナツ・アレルギーでもあり、将来家族で日本旅行が出来るかどうか下見するつもりもあるらしい。

Julienは日本人の生き方に興味があるというだけあって、自分でも柔道を10年やり、空手も1年、中国の武術も少しやったそうで、今回も空手道場を見学したいという要望があったので、新宿駅のすぐ近くの「武道学館」というところの見学を手配しておいた。その他、特に日本の食文化、盆栽、ゲームなどにも興味があるとのことで、来日後この日までに自分で秋葉原には2度も出かけていた。

11/10(日)朝自宅を出て電車に乗ったとたんに大きな地震が発生。点検で止まる。動き出して地下鉄に乗り換えたら、またそこでも点検でダイヤ混乱、ギリギリ約束の時間に間に合う。会うと彼も地震に驚いたようで、こんなのが頻繁にあるのかと恐怖を表す。

最初は築地市場の予定だったが、自分ですでに行ったというので、アメ横界隈が日常的な「食」を説明するのに都合が良いのではと考えて上野へ。着くと案の定、目が輝く。お茶や佃煮などを試食しながら、だし、乾物を含めた魚介類、果物などの説明。コンビニに入っておにぎりの海苔を乾燥させておく仕組みをデモ。具の英語表示がないのが残念。松坂屋のデパ地下で菓子、天ぷら、おでん、皿盛りなどを、またつまみ食い。更に広小路の店でも漬物、お菓子などの専門店を見学。1種類の料理を食べてしまうよりつまみ食いの方がいろいろ経験出来て良いと彼も言う。

盆栽にも興味があるというので、そのあと不忍池の周りを回って、榛葉さんが推奨してくださった「上野グリーンクラブ」を訪れてみる。野外を中心になかなか多種多様な盆栽が随分沢山置かれている。安いものからかなりの高級品まで全部売り物で盆栽市のようだ。黒松、梅、桜などの他、リンゴ、カキなど小さな木に大きな実をつけたものがカラフルに目立つ。高級品を並べた棚にある小さな黒松に彼が興味を引かれる。彼が質問するのを通訳。実生で50年間も育てて幹はやや太いが高さ10cm位のものが25万円だとのこと。黒松でも少し大きいものだと6000円というのもある。海外に持ち出すには、検疫に引っかからないように、全部土を落として水に浸す形で再包装するそうだ。

上野公園を通って戻る途中、妙な衣装の4人連れのコスプレに出会う。日本人かと思ったら中国人のようで、コスプレも中国人にお株を取られたようだと言いながら、一緒に写真を撮らせてもらう。公園の隅に喫煙の場所が指定されているのを見つけて、日本では室内でも喫煙場所があるのに、なぜ野外を禁煙にするのかと言う。フランスだと室内の禁煙は日本より徹底しているが、野外の禁煙規制はないと言う。またパチンコはギャンブルなのになぜあちこちにあるのか? とも。フランスだとこの種の店を出すのはものすごく大変だそうだ。

新宿へ出る。新宿3丁目の「てんや」で天ぷら定食でランチ。650円で安いのにうまいと親指を立てる。

1時の約束で空手道場「武道学館」へ。新宿大ガード交差点の脇の小さなビルの2階。板のフロアだが30畳くらいの部屋で白い空手着に階級別の帯を締めた10人が練習風景を見せてくれる。10人中4人が若い女性。月謝は男1万女5000円で何度来ても良いそうだ。最初は腕、手、指などの準備運動をして、それから大きな気合と共に急な手足の動きで型の練習。複雑な組み合わせワザなどもあり、相撲部屋の見学より変化に富んでいる。中心になって指導しているのは年配の男性で、すぐに息が切れるので、皆に命じてよく全員で深呼吸をする。武器がなくても自分の弱い部分をうまく守り、相手の弱い部分をうまく突くと、相手を倒すことが出来ることが素人でも分かる。30分ほど練習後小休止。外国人の会員も数人いるようで、英語で彼に話しかける人もいる。1時間ほど見てその場を離れる。

お台場へ行く。昼から雨の予報がはずれて、太陽が出てくる。レインボーブリッジ前後の風景にカメラをしきりに向ける。人工浜辺を歩きながら、彼がフランス人であることを考えて、「自由の女神」が置かれた経緯を説明する。やはり親しみがあるのか、自分から「女神」と一緒の写真を所望。一方ガンダム像も感動の様子。「博物館人間ではないが、『未来館』なら興味がある」と言っていたので、寄るつもりでお台場へ来たが、「日暮れ前に浅草へ戻りたい」と言いだしたので、急遽浅草へ。

浅草は自分でも来たらしいが、もう1度案内してほしいとのこと。まず「観光センター」の8階から概要をつかんで、仲見世へ。奥さんの着物を買いたいというので「フジヤ」へ寄る。木綿や化繊は4000-5000円だが、絹は14,000円。絹を気に入ったが、奥さんは柄の好みが細かいというので、写真を撮ってメイルで送ってみたら...と言うと、試みる。が、どういうわけかWiFiがうまく機能せず送れない。しばらく2人で苦戦するがうまく行かず、暗くなりかかったので、他を回る。「練りアン」の饅頭にまた引っかかる。六区先の赤提灯が並んだ飲み屋街に差し掛かったら、今度は日本のビールを飲みたいと希望。1軒に入って枝豆と焼き鳥を取り、彼のお気に入り「サッポロ」で乾杯。枝豆も初めての経験だそうでうまいし、ビールもフランスのものと全然違うとご機嫌。通りでは流しの歌手が演歌を歌うのが聞こえる。飲み終えて電飾のきれいな裏通りから地下鉄へ出て、青山一丁目まで送って別れる。

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