今年の4月8日に案内したオーストラリア人夫婦から、今度は3人の息子を連れて再び来日したいのでガイドしてほしいと個人的な依頼があり、再度案内した。前のときに紹介したように夫のVinhはベトナムからの難民・移民でオーストラリアの銀行でコンピュータ関係の管理職。妻のIreneも銀行関係勤務。長男のDamien(20)はメルボルンの大学で生化学専攻の3年生で、次男Wesley(19)も同じ学科専攻の2年生。三男Jordan(18)はThomas Cook大学医学部の入試面接を2週間後に控えているので、この旅行も途中で1人だけ帰国し、受験する予定。 秋晴れの空のもと、広々とした聖路加国際病院の庭の木々が紅葉して風情のある道を抜けて、その先にあるホテルで定刻に会う。予定には入れていなかったが、近くに築地市場があるので、行ってみるかと提案。彼らは市場は早朝でなければ見れないと思っていたようだが、見られると分かって「是非に」と言う。Vinhは特にウニに関心がある。息子たちはフグに関心があるが、これはなかなか見つからない。時間がやや遅かったために内部ではマグロの裁断は見られなかったが、場内のTシャツを売る店から倉庫の方角へ進む途中に大型冷凍マグロを切る店があり、そこでは皆の目が集中。しきりにシャッターも切る。場外の店にも回る。Ireneが裂きスルメイカのファンで、大きな袋を買い皆に配る。佃煮などのつまみ食いをしたり、豪州人が大切にするクジラのベーコンがあるのに驚きながら狭い混雑を抜ける。 次は上野へ向かうが、彼らがJRパスを持っているので、JR有楽町駅まで歩く。Damienは日本語を習っているらしく、熱心に「ここは銀座ですか?」などと日本語を試す。有楽町ルミネの前に長い行列。7億円の年末宝くじを買うための長蛇の列に驚き、「宝くじになぜ並ぶの?」と聞く。オーストラリアでは3倍の20億円のJackpotなのに人は無関心だとか。若者たちはすぐに空腹を訴えるので、コンビニでオニギリを紹介。袋の外し方を教えると、鮭のマヨネーズが人気でパクつく。 上野のみどりの窓口でこれから2週間の旅の切符をすべて手配。切符のローマ字併記は任意の操作らしく、係員がうっかりするとローマ字なしの切符が打ち出される。1枚は失敗だったが残りはすべてOK。JRパスに印字されている25の意味を聞かれる。国際的な場面でも平成年号を押し通す官僚主義を説明。 息子たちがタコ焼きが食べたいのでアメ横にあったとの記憶を頼りに探すが、見つからない。通りがかりの看板をみて入ったら、樽酒の並ぶ和食屋。刺身も天ぷらもカツドンもありで皆の要望が満たされてホッとする。若者たちは1食では足りず、6人なのに7食注文。プラスワンを3人で分ける。それでも全部で5500円。外へ出るとちょっと先にタコ焼きやがあるではないか。でももう満腹で後の祭り。 浅草へ。浅草観光センターで両替をして、8階へ。4月にも夫婦だけを案内して、奥さんがスカイツリーを握る格好でジョークの写真を撮ったが、父が同じポーズを息子たちに要求して撮ろうとしても彼らは嫌がる。年頃の息子の心理は万国共通。境内へ。前回のサクラと緑の浅草寺から今は黄色いイチョウの浅草寺に変わっているが、同じフォト・スポットで撮ってみる。彼らは前回のこともよく覚えている。 渋谷の交差点を見たいというので、再び上野からJRで渋谷へ。ところが、電車が新宿へ着いた時に、渋谷で人身事故があったとかで、山手線がストップ。動かない。飛び込み自殺だというと彼らはひどくショックを受ける。「こんなことがよくあるのか?」というので、年間3万も自殺者があるというと、九死に一生の難民逃避を経験した彼らには一層のショックの表情が出る。われわれはすっかり慣れて、やや不感症になり、「人身事故」と言われても「またか」と迷惑な気持ちしか持てないのを反省させられる。 仕方がないので渋谷は諦め、お台場へ。JRパスを使いたいが、山手線は使えないので、中央線で神田に出て、銀座線で新橋へ。ユリカモメへ乗り換えようと地下鉄を出たところで、WesleyとJordanがいないことに気付く。私だけで探しながら地下鉄方向へ戻ると、改札のところで彼らを発見。事なきを得た。毎回のガイドで、朝会う時に予定のItineraryを書いた紙を渡し、私の携帯番号も必ず付記して緊急のときは公衆電話からかけてくれとは言ってあるのだが、公衆電話を探すのも容易ではないようだ。 運転手の居ないユリカモメの先頭座席にIreneとJordanが座る。暗くなりかけたレインボーブリッジの電飾が浮き立ってきれい。日が落ちた人工浜辺を、それでも写真を撮りながら、自由の女神像へ。風が冷たい。Vinhは写真にこだわる方なので時間がかかる。息子たちも1人ずつの写真を好む。ガンダム像でも同じ繰り返し。そのあとVenus FortのHistory Garageへ。クラシックカーは皆、興味がありそう。「これだけのコレクションがどうしてタダなの?」とIrene.「政府の資金援助の観光宣伝なの?」とも。ToyotaのMegaWebとは違う場所なので、トヨタと関連付けにくいようだ。 新橋へ戻り、ウドンでも...ということになる。新橋の盛り場で探していると立ち食いのウドン屋の隣にラーメン屋もある。息子たちはトンコツ・ラーメンが食べたいと言う。Vinhは中華料理を毛嫌いする。多分ベトナムで迫害された時のトラウマのようだ。仕方なく息子たちはトンコツ屋に入り、両親と私は立ち食いのウドン屋へ。実私もは立ち食いウドンは初めての経験。彼らももちろん初めてで、どんなものか経験してみたいとも言う。ところが券売機で買うときに私が冷麺と温麺のボタンを間違えてしまい冷たいウドンが出させる。交換は不可とのことで、食べるが、彼らも一応うまいと言ってくれるので、申し訳ない気持ち。そのうち息子たちが先に食べ終えて姿を現し、決着。新橋の地下鉄まで送って別れを告げた。<このページ上部へ移動>
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見かけによらず元気のよい3人のオーストラリア人家族を1日半ガイドした。Lindaはマレーシアからの移民で、Pacific Brandsという会社でIT関係の仕事に従事。夫のTing(56)は香港生まれの中国人だが、伯父に付き添って12才のときにオーストラリアへ移住。地元の学校を出てコンピュータ関係の技師。一人娘のChristieは19才の大学生で商学と法律を専攻中。今回は同行しなかったが医学部を出てインターン中の息子がもう1人いる。 1日目(11/27<水>) 早朝に成田に着いてそのまま新宿に到着。2時まではチェックインできないので、荷物を預けたまま1:30にロビーで会う。Tingがコンピュータのプログラムのような細かい緻密なItineraryを見せてくれる。あくまで自分たちで考えて手配した旅程だったが、浅草、浜離宮へのクルーズ、東京タワー、皇居、銀座、秋葉原、明治神宮などはGray Lineのバスツアーを予約して組み込まれているので避ける。上野はバスで通過するだけなので歩いてみたいというのでガイドすることになった。 東京タワーがバスツアーに入っていたが、ホテルのすぐ隣が都庁展望台なので、まず最初に行ってみようということになる。デッキは23時近くまで空いているので自分たちだけでも行って夜景を楽しむように勧める。 遠くはやや霞んでいるが青空が一面に広がり、富士のはっきりした三角形のスカイラインも確認できる。Christieは方々の窓に走り回ってカメラを向ける。隣のNSビルに寄り、巨大な振り子時計も見せる。中央には大きなクリスマスツリーが聳えるのでタイムリーな記念写真。 上野へ。例によってアメ横から松坂屋のデパ地下を歩く。広小路の佃煮屋や漬物屋などでタクアンや千枚漬けを試食。不忍池湖畔に出て、下町風俗資料館に入ると、驚いたことに品川SGGの延嶋さんが受付に。たまたま資料館で「女性たちの装いと暮らし」という特別展をやっていて、その英語の説明をなさるために乞われて「特別出張中?」のようだ。しかし残念ながら私の依頼者たちは古い生活様式の方に興味があるようなので、私がその方面をガイドすることにする。実際に使われていた商家の花緒屋から長屋の駄菓子屋の4畳半「座敷」に侵入、チャブ台に座る。暑いマレーシア出身のLindaは障子に触れて、この寒さで紙1枚で外気を隔てる生活が信じられない様子なので雨戸や火鉢を説明。ヒイラギのトゲのある葉に魚の頭を挿した魔除けの下で記念撮影。2階は明治から昭和の女性髪型などが特別展示されているが、彼らは興味を示さない。いつもある実物の銭湯の番台や五右衛門風呂、それに昭和中期のモデルルームなどもすっかり消えていて残念。それにいつもは写真撮影が出来る昔の玩具コーナーまで撮影禁止で不自由。この状態は来年3月2日まで続くそうだ。 外に出てイチョウの木の下を歩く。彼らは銀杏を知らないので、雌雄の別や実の臭さを実感してもらう。Pooの匂いだとChris。弁天堂にも寄る。これはお寺か神社かと聞かれて一瞬戸惑う。お寺だと答えて念のためお守りを売る人に確かめる。弁財天は神社もあるのでややこしい。上野公園を一巡して上野駅へ。予定ではこのあと浅草も回ることになっていたが、明日のバスツアーに入っていたので、今日はここまでにして新宿駅へ。夕食を一緒に...と誘われるが、遠慮させてもらい3日後の11/30に再会を約束して別れる。 2日目(11/30<土>) 8:30にホテルロビーで会う。今日は築地→原宿→お台場の予定。ホテルの近くの地下鉄・都庁前から大江戸線で築地市場へ。土曜なので通勤ラッシュがなく座れる。Tingが「1日乗車券はどうか?」と聞くが、ホテルの位置の関係で、都営とメトロ両線を使う方が便利だし、ユリカモメは別料金なので却って高くなる事情を言う。 9時前には市場に到着。マグロのカットも見られる。冷凍だからスライスされて、投げ出されると堅い音を出し、赤い(氷の)板のようだ。この時期カズノコがやたらに置かれていて彼らは不思議がる。外に出て、場外市場へ。Lindaが乾燥マンゴウに興味。1000円だというが、あまり大きくない袋にはみ出すくらい入れてくれて喜ぶ。出生地マレーシアの郷愁か。夫のTingは乾燥貝柱に関心がある。これで味をつけたおかゆが好物なのだそうだ。500gで 8,500円もする大きいものを安いと言って買う。 歌舞伎座、銀座、ソニービルなどを説明しながら、JR有楽町まで歩いて原宿へ。娘のChristieはコスプレも見たいというが、それはもう中国人に乗っ取られかけている状況を言う。ただ、竹下通りの発祥の店「竹の子」には案内。店内に入り、通路が進めないほど置かれたコスプレ衣装に圧倒されて驚く。次に来た時に貸衣装で借りて歩いてみたら? というと「やってみようかな」とも。彼らはここでの買い物にはほとんど興味がない。Design Festaを抜けて、Chrisが好きだと言うお好み焼きのサクラ亭を通るが、ランチにはまだ少し早い。 銀座線表参道から新橋へ抜けて、ユリカモメでお台場へ。お台場海浜公園からまた人工海岸を歩く。砂浜ではビーチバレー大会が進行中。何でここに自由の女神が? というので1998年の「フランス年」からあとの経緯を言う。Tingはこんな大きなものを本物とレプリカと2度もフランスからどのように運んだのだろう? と聞くがそれにはすぐに答えられない。 ランチということで、AquaCityに入り、1階のエスカレータ脇にChrisの好物「お好み焼き」の看板があったが、ランチでは扱っていないとのこと。4階に上がりソバの「権八」へ。レインボーブリッジと女神像が目の前に広がる窓側の席で鴨ソバなどを食べる。Tingが気を利かせて和牛やフォアグラまで知らない間に注文。私もフォアグラを初めて少し賞味させてもらった。お客が入ってくる度に店員が大声で「いっらしゃいませ!」と叫び、別の店員がまた「どうぞこちらへ!」大声でどなるのは何と言っているのか? とLindaが聞く。オーストラリアの日本料理店でも同じで、どなるように言われるのが気になっていたとLinda。我々にはごく普通の光景だが、そう言えば外国のレストランでは大声で客を迎えることはなくいつも静かな雰囲気で穏やかに寄り添うように客を迎えるような気がするが...。会計はちょっと値が張って4人で12,000円。チップを払わない代わりに自分で勘定書きを持って出口で支払うというのは、彼らは言われないとなかなか慣れない。 前回の若者と違ってChrisは19才でもガンダムを知らない。巨大さの故、どうしても目につくので「ロボット」と一緒にTingが写真だけは撮る。トヨタのHistory Garageへ。今度はBack to the Futureのデロリアンが興味の的。直径150mの観覧車などをすぐ近くから眺め、今回は改装なったトヨタのMegaWebも見る。土曜なのでシミュレーターには長い行列。ChrisがOutletにも興味があるというので、Venus Fortに行くが、好みに合わないようでやはり何も買わない。 まだ時間があるのでいくつか提案。その中で「大江戸温泉」が良いとLinda。夫のTingも興味があるというがChrisは温泉に入るのは嫌だと言う。温泉は無理に入らなくてもユカタで歩き回るだけでもOKと言うとコスプレの気分を想像したようで、「行ってみたい」とのこと。ユリカモメで「テレコムセンター」へ。 平日なら1,980円だが土曜なので2,180円。それでもみながそれぞれ好みのユカタを選んでロッカーで着替える。夫のTingと私は男性のロッカー室へ。Tingは着物は右前に着て、死人は反対に着せるのだろう...と言う。すごいと思って任せたら「右前」の意味がはっきりせず、あとで反対に着ていることに気付いた。帯も前で結んで後ろへ回すやり方を教える。江戸の街を模したような広い空間に集まる。男女ともそぞろ歩く人波や方々に腰かけている全員がユカタ姿なので、タイムスリップして別世界に来た感じが面白い。誰かが後から「Takeoさん」と呼ぶ。振り返ると何と数日前にガイドしたVinhとIrene夫妻。息子たち3人が近くのJoypolisでゲームに夢中の間、別行動で夫婦でOnsenを楽しんでいる。早速、お互いには初対面の2組のオーストラリア人家族を私が引き合わせることになった。そして全員で記念撮影。VinhとIreneはすっかり気に入って何ともう4時間もここに居るとのこと。少し情報交換をして、今度はTingとLindaの家族を連れて館内を一回り。しかし温泉に来ていても水着を付けずに温泉に入るのは気が進まないようなので、野外の広い場所を占める足湯に行って浴衣がけで座り、写真撮影や談笑。足湯の底には足裏を刺激するように小さな石が埋め込まれていて痛く歩きにくい。一角に足湯に特殊な輸入魚を入れて足の角質を食べさせ、カカトのガサガサをきれいにするという小屋がある。15分、1,575円と高いが満員。それを見て彼らは「動物をそのように扱うのには抵抗がある」と否定的。 温泉に行って温泉に入らないのも変だが、それでも何だが1日の疲れがとれた気がして、すがすがしい気持ちで外に出る。観覧車のネオンが鮮やかに動く中、新橋から新宿へ戻り、名残を惜しんで別れを告げた。
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