ソ連が崩壊して、アメリカが一人勝ちの世界が生まれた。いつ核戦争が始まり、人類が滅亡するかもしれない「冷戦」状態が終結したと皆がホッとしたのもつかの間、9/11の「戦争」が起こった。もう怖いものはないと考えていたアメリカにとって、これはショッキングな出来事だったに違いない。アメリカは猛然と「報復戦争」を起こし、大ボス国のものすごい剣幕に怖気づいた多くの国々が、「テロ撲滅」という大義名分にのせられて、「協力」した。
世界の大親分になった(?)アメリカは、もはや世界の中の1国という気持ちはないようだ。ソ連が対等の力をもっていた時代だったら、アメリカもソ連の顔色をうかがわなければならなかった。だから、ソ連がアメリカのアフガニスタン侵攻作戦をすぐに受け入れるなどということは考えられなかったので、あれほど簡単には挙行できなかっただろう。また、世界が2つのブロックに分かれていた時代だったら、それぞれのブロックが常に同盟国をできるだけ増やしてもう1つのブロックより大きな影響力を持って生き残る必要があった。そのためには同盟国が相手に寝返らないように、協定を結び、同盟国の言うことに耳を傾けて友好関係を維持していく必要があったのである。
しかし、怖いものがなくなった地球の大将は、「京都議定書」の件を持ち出すまでもなく、わざわざ小国の言うことに耳を貸さなくても、自分の地位は不動だと自覚したようである。また大きな力を持つ大国も、やっと独立した小国も、同じ扱いや発言権を与えがちな国連という組織は、アメリカには不当で無意味なやっかいものに思えても不思議はない。しかし平和を祈願して世界が育てた機構を、おいそれとつぶすわけにもいかないので、アメリカの都合に合わせて、密かに裏工作が進行中のようだ。
そこには、世界を手玉にのせて思うままに操る「独裁者」の影が見え隠れする。次にあるような国連に対するアメリカの行動を観察すると、結局アメリカは、例の悪の枢軸と決め付けた3つの国にできるだけ早く口実を作って、戦争をしかけたいので、和平の道をとろうとする勢力は何としてもつぶさなければならないと考えているようだ。うがった見方をすれば、今、急に日本で「有事関連法案」が出てきたのも、アメリカが北朝鮮をたたく時に、韓国だけでなく、日本も基地にするための下準備の日米合意ができているのではないかと思いたくなる。そして、そのときにメディアに邪魔をされては困るので、メディア規制の法案も出てきたのかもしれない。
平等と公正な民主主義をモットーに生まれたはずの国が、民主的とは程遠いやり方で国連に手を加えようとしている様子が、イギリスの批評家ジョージ・モンビオット氏によるレポートにでていたので、日本の新聞には出てこない内容なので、次にその2つを和訳してみた。拙い訳で恐縮だが、家族誌ということでご勘弁いただきたい。
平和主義者への宣戦布告
今度の日曜日(4/21)にアメリカ政府は遂に全世界に対してクーデターを起こすことになりそうだ。これは1ヶ月も前から練られていたもので、おそらく秘密裏に挙行されることになるので、多くの者が気づいたときにはあとの祭りということになるだろう。つまりアメリカは力による自国1国の世界支配体制を優先させて、過去60年も我々が続けてきた国際的な協議を基本にする体制を、完全に崩壊させようとしているのである。
クーデターのまず第1歩は、化学兵器を世界から排除する責にある人物を、この5日間のうちに、その地位から引き摺り下ろすことである。もしこれがうまくいけば、国際機関の長がこういう汚いやり方で排除される最初のケースになる。すると今度は全ての他の国際機関がこのような不当な力に屈する可能性が出てくる。またこのアメリカの行為は、イラクが所有していると思われる化学兵器を、平和的に廃絶していくという選択肢を閉ざしてしまい、その結果、戦争によってしか、イラクの化学兵器を処理することができなくなることが確実になる。
国連の化学兵器禁止機関は化学兵器禁止条約を執行し、化学兵器の実験施設、製造工場、保管庫などを視察し、そこに存在する化学兵器が廃絶されるように監視する。この機構の長官の職にある人が、勤勉すぎるくらいに勤勉なブラジル代表のホセ・ブスターニ氏で、彼は、異論があるかもしれないが、この5年間で、世界中の誰よりも、世界平和に貢献した人物である。彼のもとで働く監視官は200万に及ぶ化学兵器と世界中に点在する化学兵器関連施設の3分の2を廃絶してきたのである。また、この機関への加入を渋る国々を、彼は巧みに説得して、この5年間に、加盟国の数を87カ国から145カ国へと飛躍的に増大させた。これは近年の国際機関の加盟増大率では最高のものである。
2000年の5月には、この彼の並外れた記録的な功績をたたえて、ブスターニ氏は、1期目の任期の途中であったにもかかわらず、満場一致で、第2期目の長官に再選された。昨年にはパウエル国務長官自身も彼に手紙を送り、その「全く見事な」業績に感謝の意を表した。しかし今では全てが一変した。その特筆すべき功績の故に讃えられた人物が、人類の敵として悪人扱いされているのである。
今年1月に、事前の予告や説明もなく、アメリカ国務省は、ブスターニ氏の「管理のやり方」が気に入らないという理由で、ブラジル政府に対して、彼を召還し解任するように求めた。このアメリカの要求は、「長官は、いかなる政府に指示を求めたり、いかなる政府からの指示も受け入れる行為をしてはならない」と定めた化学兵器禁止条約に真っ向から違反するものである。ブラジル政府は要求を拒絶した。3月になると、アメリカ政府は、「金銭上の不正」、職員の「モラルの低下」、「公正さを欠くこと」、「思慮を欠いた行動」などという言葉でブスターニ氏を非難して、もしブスターニ氏がその名声を汚されたくなかったら、辞任すべきだと警告した。
またしてもアメリカは条約を踏みにじった。条約には、その構成国は、機関役員に対して「影響力を行使しようとしはならない」と強調されているからだ。ブスターニ氏は辞任を拒否した。3月19日にはアメリカは、ブスターニ氏に対する不信任決議案を提出したが、それは否決された。そこで、アメリカは、国際外交史上先例のない手段に打って出た。つまり、彼を葬り去るために「特別会議」を召集したのである。その会議はこの日曜日に始まるが、今度はアメリカがその望むところを実現しそうである。
アメリカは、この機関に対する資金面での最大の支援国であると考えられているので、先月、不信任投票に敗北して以来、アメリカを支持しなければその資金の支払いを拒否するということで、弱小国の腕をねじ上げてきた。その結果、化学兵器禁止機関は屈服せざるを得なくなっている。先週、ブスターニ氏は私に「ヨーロッパ諸国はアメリカがこの禁止条約を無視することになることを恐れて、アメリカを一緒のテーブルに着かせるために、私を犠牲にしようとしているのです」と言った。彼の最後の望みは、この機関を記録的に支持して、これまで模範的だったイギリスが毅然とした態度を示してくれることだ。この日曜の会議はブレア政権に、国際協調路線をとるか、アメリカとの「特別な関係」をとるかという、これまでに彼が直面したことのないようなごまかしの効かない選択を迫ることになる。
アメリカはブスターニ氏に対する嫌疑の具体的な内容を明らかにしようとはしていない。化学兵器禁止機関は確かに財政危機を被っている。が、これはアメリカが最初一国だけで予算を切り盛りし、アメリカが支払うべきものをきちんと支払わなかったからである。実際、この機関の会計監査が行われたばかりだが、全く問題のないことが判明している。職員のモラルについては化学兵器禁止機関のような組織から当然予想されることだが、同じような資金不足のどの組織と比べても、全く引けをとらないくらい立派なものだ。とすると、ブスターニ氏が罰せられるとされる行為は、残りの2つの嫌疑、つまり「公正さを欠くこと」と「思慮を欠いた行動」の中に入ることになる。
公正さを欠くという嫌疑は、まさに化学兵器禁止機関が公正そのものであったがために生じたものである。化学兵器禁止機関はアメリカの化学兵器施設を検査するのに、ほかの国の施設を検査するのと全く同じように厳しく、行おうとした。ところが、丁度イラクが拒否したように、アメリカも、その利害が反する国からの武器監査官の受け入れを拒否して、査察を許された監査官にも、施設のどの部分は査察して良いとか、どこはダメだとか言って指示した。アメリカはまた、大統領に、予告なしに査察することを拒否すること、査察官が化学物質のサンプルを持ち帰ることを禁止することを認める特別の立法処置をした。
「思慮を欠いた行動」とはブスターニ氏が自分の公約に沿って、サダム・フセインに化学兵器禁止条約に調印するよう説得しようとして行った行動を指す言葉である。もしイラクが調印すれば、イラクも(規則にのっとった、予告なしの)査察を受けることになるのは他の全ての国と同じになる(もちろんアメリカは例外だが)。これまでのところ、ブスターニ氏はイラクの説得に成功していないが、これは国連の安全保障理事会の支持を取り付けていないから、フセイン大統領としては調印しても得るところはあまりないと踏んでいるのだとブスターニ氏は考えている。
ブスターニ氏は、イラクを説得して化学兵器禁止条約に調印させるという化学兵器禁止機関の提案を仮に安保理が支持してくれるとすれば、アメリカには戦争によってイラクを屈服させる以外のもうひとつの選択肢が生まれることになると述べた。イラクの査察のために最初に設けられた国連特別委員会には、実はアメリカ政府によって送り込まれたアメリカのスパイでいっぱいだったことが判明し、それに代わった安保理の支持機関である国連監視検証査察委員会なら受け入れるという理由は分かりにくい。が、全く公正な姿勢をとり続けてきた機関からの査察官なら受け入れるだろうということは容易に見当が付く。実際、1998年に国連特別委員会がイラクから強制的に追い出されたときに、国連特別委員会がイラク国内で発見した化学兵器を完全に処理するためにイラクに入ることを許されたのは化学兵器禁止機関だったのである。つまりブスターニ氏は、アメリカが解決を望まない問題に対して、解決法を提案したという理由で、退陣しなければならないのである。
「いまアメリカがやろうとしていることはまさにクーデターといっていい。アメリカは条約に手を加え、事務局長を追放するために、無茶苦茶な暴力的手段を使っている」とブスターニ氏は言う。化学兵器禁止条約にはこのような対応の仕方を認める条文はないので、アメリカはかってに滅茶苦茶な規則を作っている。もしアメリカが勝てば、国連特別委員会のように、化学兵器禁止機関も回復不可能な妥協をしいられることになる。今度の日曜のアメリカの成功はすべての国際機関の独立を脅かすものになるだろう。
だとすれば、今こそ、我々の政府は、この全世界の運営について、はっきりとした態度の違いを見せるべき、めったにない時期であると言える。国際関係を中心にすることを反古にして、戦争に代わる選択肢を選ぶ道を閉ざし、一番親密な関係の同盟国を支持することを選択することもできるだろう。しかしまた、世界平和と国際法を大切にして、アメリカに挑戦することもできるのだ。政府の力の背景となっている我々国民が、そんなに大騒ぎをしているのだから、政府も聞く耳をもっているとすれば、ご都合主義でない原則を踏まえた態度をとる以外にはないだろう。アメリカが弱いものいじめをしながら戦争への道を進むのをやめさせるのに、あと5日しかないのだ。 (2002年4月16日)
「このことが少しでもこの部屋から漏れたら、漏らしたやつの命はないと思え」
ブレア首相はイギリスが国際協調路線をとる国の1つだと考えているかもしれないが、ブッシュ大統領はアメリカをそうとは考えていない。ブッシュ氏は他国を動員してテロとの戦争を行ったが、同時に協調関係を壊す戦争も展開しているからだ。
2週間ほど前、アメリカの国連代表が、初めてウィーンでの包括的核実験禁止条約会議に欠席した。このことから多分、アメリカはもはや核弾頭の実験を定めた条約を守る気持ちがないのであろう。ワシントンポスト紙の報道では、1週間ほど前、国防総省が中央情報局に国連主席軍備監査官であるハンス・ブリックス氏について彼の信頼を失墜させるような事実を求めて、密かに調査するよう命じた。しかし中央情報局が彼に非難されるべき事実を全く発見できなかったので、国防次官は「非常に立腹した」と報じられている。
19日の金曜日には、アメリカ政府は、国連地球温暖化会議の議長であるロバート・ワトソン氏を解任することに成功した。議長として加盟国に地球温暖化問題に真剣に取り組むようずっと強く要請し続けていたことがアメリカの石油企業エクソン・モビルの気に障ったのだ。昨年、エクソン・モビルは、温暖化会議の議長を下ろすように要請した覚書をホワイトハウスに送っていたのだ。
強引な無理強いや秘密会議を1週間続けたあげく、昨夜ついにアメリカ政府は、国連化学兵器禁止機関長官のブスターニ氏を強引に追放した。このコラム記事で先週予告したように、これは国際機関の長官が、その任期中に更迭された初めてのケースになる。この数日間にアメリカが展開した戦術を見ると、アメリカ外交がどのように力を行使するのかがぞくぞくする程よく分かる。
19日にはアメリカの国連大使が、違法なことだが、化学兵器禁止機関のアメリカ人スタッフ達を集めて打ち合わせ会をもった。その会に遅れて出席した大使は、ブスターニ氏の後任を見つけようとしていた(これも違法な行為なのだが)のだと釈明した。また、アメリカが「その長官の地位にふさわしい資質の人物を見つけるのに大変苦労した」とも述べた。なぜなら誰も「つぶれかかっている機関に関わり」たいとは思わないからだという。この言葉はスタッフ達には耳新しいことだった。ブスターニ氏を追放すると化学兵器禁止機関は生き返るとアメリカに聞かされていたからである。しかしアメリカ大使は続けた。もし後任が「ブスターニ氏のような人物だったら、我々は『そんな機関なんかぶっ潰しちまえ』というだろう。我々アメリカは(化学)兵器を人の干渉を受けずに解体もするし、自分で管理する」と。
アメリカはもともと、この長官の職はラテンアメリカの国の代表にまわすと約束していたのだが、全くご親切なことに、大使は「ラテンアメリカ人はひどく無能であるのが特徴なので、とてもそんな職につこうなどと決断できるやつはいないだろう」と述べたのである。そして会の出席者に、「このことが少しでもこの部屋から漏れたら、漏らしたやつの命はないと思え」と警告したのだった。
アメリカが望むような(投票の)結果が出るようにテコ入れとして、アメリカは、自分が召集した化学兵器禁止機関の「臨時会議」に出席する各国の代表に金銭を握らせたようだ。ミクロネシア代表は、出席できないが、アメリカに自国の投票権を委託する(これまた違法行為である)と言った。21日には、アメリカは、ブスターニ氏がこの状況を打開するために、化学兵器禁止機関の次官をアメリカ人に代えると提案してきたと述べたが、22日には、これが全くのでっち上げであることをアメリカも認めざるを得なくなった。
この1ヶ月にアメリカが国際法を破ろうとする行為は、アメリカが一方的に弾道弾迎撃ミサイル条約を放棄したこと、生物兵器禁止条約締結をうまく妨害したこと、温暖化防止の京都議定書を拒否したこと、銃器使用に関する国連の条約の件、それに国際刑事法廷の件に続くものである。アメリカは、世界の他の国々から孤立しようとしている。またアメリカに関するあらゆる条約をご破算にしようとしている。アメリカが世界的な信頼を得ていると思っている国々とけんか分かれする危険があることが当然考えられるのに、一体なぜそこまでして、国際的な協調関係を壊そうとしているのであろうか。これにはいくつか入り組んだ理由があるように思える。
まず第1の理由で、極めて明らかなことは、めちゃくちゃをやる力があるからやるのだ、ということだ。アメリカは、自らその強力な力を確立している。他の国々は、アメリカが次に一体何を始めるか、絶えず不安な状態に置かれるので、他の国々はアメリカと直接、対決するのを確実に避けるようになる。
秘密裏に国際条約を反古にしようとする試みのうち、少なくとも3つは、差し迫ったイラクとの戦争を考えて挙行されたことも明らかである。サダム・フセインを亡き者にするアメリカの計画は、「障害を一掃してしまう」新型の核兵器を使うことになりそうなので、核実験禁止条約(これにアメリカは批准したことがないのだが)は無視しなければならない。またアメリカのイラクとの戦争を正当化する根拠はサダム・フセインが大量破壊兵器を所有している可能性があるということである。従って、この戦争を行うのに2つの差し迫った障害は、ブリックス氏とブスターニ氏であった。2人はこれらのイラクの兵器を平和的に取り除く方法を提案したからだ。しかし、アメリカ政府が大量破壊兵器に純粋に懸念を示していることは疑いのないことだとしても、これらはイラクを打ち負かしたいと彼らが望む主な理由ではない。
戦争を挙行すれば、アメリカは、ますます不安定感の増す中東で、強力な力を回復することができるだろうし、膨大な量のイラクの石油資源に関して支配権を確立することもできるだろう。イラクのことはまた先代のブッシュ政権がやり残した仕事で、息子のブッシュ大統領にとっては、ブッシュ一家の個人的な問題でもある。しかも戦争は人気につながる。ブッシュ大統領が戦争をしようとすればするだけ、彼の支持率がぐんぐん上がる。また、政治的に重要な意味を持つ軍需産業を、ますます国家が支持しても正当化される。議論のあるところだが、戦争をすると国家の意味が改めて正当化されるところがある。1990年代に共和党は強力に「小さな国家」を主張したら、自分でする仕事がほとんどなくなってしまった。すると多くのアメリカ人が自分たちはなぜ税金を払っているのかと疑問に思い始めたのだ。戦争だけが、唯一、国家と切っても切れない機能と言える。そして究極的に、アメリカという「小さな」国家が膨大な力と資源を蓄積してきたことを正当化する手段にもなる。
しかしこのように国際法を次々に破る行為が行われる根本的な理由は、ほかの国がそれを許しておくからなのだ。先週のこの欄の記事を読んだ何百と言う読者が、英国の外務大臣に手紙を送り、アメリカに恐れずに立ち向かうよう申し入れた。芸術家のブライアン・エノ氏はロビー・ウィリアムズ、ダミエン・ハースト、サルマン・ラッシュディ、ビアンカ・ジャガーなどといった多種多様の有名人のサインのある嘆願書をまとめた。たとえ外務大臣が人の言うことには耳を傾けないにしても、少なくともイギリスを代表する冷静な知識人なら反応を示すだろうと願って作った嘆願書であった。しかし、19日にアメリカが持ち出したブスターニ氏解任の決議に最初に共同提案国となったのは、なんとイギリスだったのだ。
確かにほかの国々がアメリカの気持ちを逆なでしないようにするのが分からないではない。もしアメリカが世界の諸条約を守り続ける気持ちになれば、危険な孤立主義に逃げ込まないですむことになると大臣たちは主張する。しかし、いったん他国がアメリカの要求に屈すると分かると、アメリカは自分の都合に合わせて、条約を捻じ曲げることを続けるだろうし、結局は国際法の枠組みそのものが崩壊してしまうだろう。アメリカの孤立主義よりはるかに危険なのは、世界規模の協定が一方的に破られて、各国がかってな規則で生きていかざるを得なくなることだ。
ブッシュ大統領が自分のやり方を通せないときに怒って退席するというのなら、そうさせればいい。しかし、もしそうするのなら、ブッシュ氏はもはや自分以外の国では、何か自分の希望することを行おうとしても、精神的な信頼感も物質的な協力関係も期待できなくなるだろう。いくら自分で「名誉ある孤立」と言ってみても、それはとてもアメリカ政府が受け入れることができそうもないような孤立感なのだ。 (2002年4月23日)
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