妊娠から誕生まで 色を「聴く」! 超電動浮揚の不思議 愛の仕組みとドーパミン 墜落中の飛行機で考えたこと 一石二鳥2億人の「協同作業」 幸福の科学
TEDとはTechnology, Entertainment, Designの略で、先端技術(technology)、楽しめる事柄(entertainment)、将来を見渡す展望(design)などを語る場として,年1回カリフォルニアのモントレーで講演会を催す団体。2006年からはその内容をネット上でタダで配信するようになり、今では1200本もの動画が見られる。「才能が溢れ出る究極の泉」とも言われ、世界中のその道の専門家や他人ができないような経験を持つ人など「人に知らせる価値がある考え」(ideas worth spreading)を持つ人がプレゼンをする場になっている。その中から私が面白いと思ったものを幾つか拾い出してみた。それぞれの画面をクリックすると「警告」画面が出るが、安全なサイトなので、「許可」していただいて大丈夫。Languageのところをクリックすると日本語や英語の字幕が出るものもあるが、ボランディアで翻訳されるためか意味をなさないものや誤訳も多い。講演者は時間制限がある上に専門性もあり、かなり早口で、分かりにくいものもあるが、英語を聞くのには便利だし内容も非常に面白い。
実際この世に命を与えられていても、一番の神秘はやはり「命」だ。しかしその命が誕生する過程を詳細に実際に見ることは不可能だった。X線写真で撮られた母体の赤ん坊の黒い影のような写真はよくある。が、生まれ出てきた赤ん坊と対面しても、それまで9ヶ月何が起こっていたのかは謎のままだった。しかしMRIの発明により、、実際の体内での奇跡を鮮明なカラーの映像で捕らえることが可能になったという。イェール大学のAlexander Tsiaras教授は、MRIの発明でノーベル賞を授与されたPaul Lauterbur氏の協力を得て、自分で書いたプログラムを動かしてコンピュータとMRIと連結させ、実際の身体内部の見事な動画・静止画を撮った。驚くべき神秘的な映像だ。
色盲の人にとっては、晴天も曇り、花はいつも灰色、テレビ・映画はいつも黒白だ。しかし全色盲のニール・ハービソン(Neil Harbisson)さんはコンピュータ科学者の友人の協力を得て、色を耳で聞く電子の目を考案し、実際に8年も使っている。
前頭部につけた小さな電子の目で前方の色が発する電磁波をキャッチし、それを頭の後ろに付けた小さなチップが音に変えて、頭部に密着させた小さな発信装置を使って、頭蓋骨に振動を与え鼓膜に伝える。このようにして「聴いた」いろいろな音の色名を覚えて、慣れて行き、いちいち「翻訳」しないでも知覚できる状況を作ると、自然な感覚になり色が夢にまで現れるようになるという。この機器はもう身体の一部になってしまっていて、パスポートの写真もこれを付けたままで撮ることを主張し、許された程だ。
美術館も「聴く」場所に変わり、彼はピカソも聴く。つまり美術館がコンサートホールにもなる。スーパーの中を歩くと色の音が混在して聞こえ、ナイトクラブのよう。衣服の着こなしも以前とは違ってきて、いい「音」がする着物を着るようになった。だから人前に出るときはハ長調、葬式に参列するときはロ短調の衣服にする。料理の色でも「作曲」できるので、レディ・ガガのような音のするサラダのあとに、ラフマニノフのピアノ協奏曲のメインディッシュという具合。人の顔も聞くが、美人が必ずしもいい音色とは限らない。チャールズ皇太子もニコール・キッドマン嬢と似た音がする部分がある。コンサートの聴衆をいろいろ見渡すだけでコンサートになる。変な音楽になることもあるが、これは私のせいではなく、聴衆自身が悪いと思えばいい。
逆に音を聴いて色にすることも可能だ。有名なキング牧師の演説とヒットラーの演説を色にして比べてみるとおもしろい。色だけ見せると大抵の人はヒットラーの演説を支持する。
現在彼は360もの色を、人の顔のように識別できる。しかしそれに満足せず普通の人が見えない色まで見えるようになった。つまり可視光線の外側の赤外線や紫外線まで電子の目では見えるのだ。リモコンは赤外線を出すので、向けられるとすぐに分かるし、紫外線も聞こえるので外出が危険かどうか自分で判断できる。
このような身につけるセンサーをサイボーグというが、彼はこの分野をもっと発展させようと「サイボーグ基金」(Cyborg Foundation)を作って活躍している。色盲という一見不利な状況を逆手にとって自分の人生を広げ、新しい世界を開拓していく姿勢がすごい。このビデオは日本語の字幕はありません。
液化ヘリウムなどに浸けることで超低温にして電気抵抗がゼロになった超伝導体は磁力線をはねつけるので、磁石の上に持ってくるとそこで空中に浮かび続ける。この原理はすでに1世紀前から分かっていたことだが、科学技術が発達した最近になってやっと目で確かめられる状況になった。電気は電子の流れで、普通は流れる途中で原子に衝突し、熱を放出してかなりのエネルギーを失う。しかし超伝導体では、この衝突が起こらないので、エネルギーの放出がない。これは量子効果(quantum effect)と呼ばれる現象だが、超伝導体の中にも無数の「磁気を帯びた粒子」(fluxon)があり、個別に動き回っている。超伝導体が外部の磁場の中に置かれると、その粒子を動かなくする力が超伝導体全体に働き、導体自身が固定化される。これは量子
物理学では量子固定(quantum locking)と言われ、磁力線をはねつけるので全体が磁石から浮上した状態で固定される。(quantum levitation) 大きな円形サーキットの磁石の上で固定した超伝導体を押してやると下の磁石の軌道に沿って無限に動き回る。これは超電動体自身がいかに動き回っていても、その中のFluxonは固定され、周りの磁力線との関係も全く同じ状態を保てるからだ。
超電動体は抵抗なしに大量の電流を流せるので、強い磁場を作ることができる。ビデオの中の8センチ弱の超電動体の厚さは0.5ミクロン(1/2000ミリ)しかないが、先ほどのfluxonを1000億個も含み、その浮力は自重の7万倍のものを浮かせる力を持つので、この小さな円盤の厚さが仮に2ミリになったとすると1トンもの重みを持ち上げる。だからこの原理を利用して、MRIが出来、「リニア・モーターカー」が浮上して走れるわけだ。このビデオは日本語の字幕はありません。
<次ページへ>
|