ポーランドの若者たち ベトナム難民の夫婦 オーストラリア教師夫妻 日本好き豪州姉妹 イスラエルの実業家 今度は鎌倉へ 2つの博物館めぐり イスラエル人との奇遇 マレーシアからの女性たち 豪州からの親戚4夫婦 元旦にガイドしたインド人家族 インドからの老技師夫婦 シンガポール兄妹とイタリア婦人 完全菜食主義のアメリカ人 アメリカの大学から 上海のイギリス人教師 ロンドン在住イスラエルの若者 繊細な感覚の豪州若者 ニューヨークからの若教師夫婦 イタリアの冒険女教師 甘党のニューヨーカーたち 英語受験本探しのタイ教授 台風襲来中のガイド 日本で再会ロシア人大学生たち 地ビール探しのイスラエル若者 オバマ大統領友人のアメリカ人 インドネシアからのカプル パナマとベネズエラ出身のアメリカ人 スェーデンからのゆとり老夫婦 マレーシア出身の豪州人夫婦 好奇心旺盛のフランス若者 春・秋2度来日の豪州人 大江戸温泉で偶然再会 イギリス人をスカイツリーへ 豪州人を江の島・鎌倉へ
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2011年の原発事故から2年が経ち、恐怖感が少し遠のいたせいか、海外からの観光客が増えています。そのせいでボランティア・ガイドへの依頼も増えて、今年は74才の私もかなり動くハメになりました。ガイドをする度にその内容を仲間のガイドに知らせる「報告書」を書くことになっていて、今回はそこから実際に私がガイドして書いたものをいくつか転載して、最近のガイドの様子を少しご覧に入れたいと思います。
同じようなコースが多いし、過去に案内した人の紹介による依頼者も多いのですが、案内する相手の個性、国民性、年齢などによって全く違う時間になります。全く異なる文化や考え方の接点になることも多いので、うまく調整し、相手の希望を満足させるのに苦労が多いことも事実です。しかし違う文化で育った人に接すると必ず驚きや発見があります。海外旅行でも現地の人に親しく接して話し合う機会をもてることはまれなのに、日本に居ながら、費用もかけずに、海外旅行以上の海外旅行をしている充実感があるのは皮肉なことです。
4/21にシンガポール人兄妹と一緒に案内したDさんからガイド中に頼まれて、彼女の親友のイタリア人夫婦を2日間案内した。従って出身は同じイタリア東海岸のPescaraに住み、自動車エンジンのターボチャージャーを生産するHoneywell社(元はGarrett Systems)でDの亡夫と同僚であったL(36)とその妻で歯科医の助手をするM(38)。Mはその町では名の知れた歌手でもあり、出発の4日前にもコンサートで歌ってきたという。Lはとても明るい元気溌剌とした男で、サッカーをはじめ種々のスポーツをこなすだけでなく、ギターも趣味。Heneywell社はグローバル企業なので世界を飛び回り、このところはブラジルやインドでの仕事の合間をぬって、インドに誘ってもついて来なかった奥さんを日本なら...というので連れてきた。世界中を動き回っているのでイタリア語より英語を使う方が多い生活だと言うだけあって、とても聞きやすい英語だ。日本にもHoneywell社の工場が埼玉にあり、彼はよくそこにも出張になるので、もう6度も来日している。
<1日目4/27(土)>
8:30に広々としたロビーで会う。Itineraryは唯一希望のあった築地市場以外は任すというので、一般的なコースを2日間で回ることにする。Lは6回来日していても、いつもホテルを取る上野周辺を少し歩く程度であとは埼玉の工場へ行くだけなので、ほとんど観光していないという。9時ころには魚市場の奥に到着したが、大マグロの切断などは既に終わっていた。新鮮ではあっても実際は輸入されてくるミル貝などを見ながら、イタリアからも魚を日本に輸出しているはずだという。大マグロを市場内では見られなかったが、市場内北側の大きな倉庫の前にマグロを電動ノコギリで切る店があり、店頭に転がっている尾のない冷凍の大マグロを発見して、彼らは歓声を上げた。その他鰹節や生ワサビなども初めてのようで説明が必要のようだった。
そのまま浜離宮庭園へ。新緑が爽やかでツツジが映える。抹茶が好きだというので、潮入りの池の茶屋でお茶にする。今までは500円だったが、模様入りのお菓子との組み合わせも出来て700円のもある。連休で快晴なのにお客は少ない。静かでそよ風も心地よく「今まで日本でこんなに落ち着いた時間を過ごしたことはない」とL。陽の当たるベランダの椅子席へも移動してゆっくりして、写真も撮る。池の周りに防空壕のようなものが3つくらい見えて、よく外人に聞かれる。カモ猟のための仕掛けらしいが私にはいまだにイメージがわかない。
外へ出て銀座へ歩く。黒川紀章の「中銀カプセルタワー」を説明しながら「博品館」前から銀座7丁目のヤマハホールのところに来ると2人とも目を輝かせて中へ。歌手とギタリストのカプルだから興味津々で楽器の点検。しかしそのまま歌舞伎座へ出て、掲げてある役者の絵を見ながら歌舞伎を説明するが彼らはほとんど知らない。
上野へ。新緑で爽快だがツツジやサツキ以外の花は目立たない。数日前Donaを案内したときに寄ったので、友人の彼らにも「下町風俗博物館」で靴を脱がせて汚い4畳半に座って、50年前の生活を同じように披露。不忍池の弁天堂でも靴を脱いで中の弁財天の近くまで入れてくれる。Mにとっては日本で初めて見る仏像なので興味津々。上から下がる大きな赤提灯や大きな鈴も試してみる。一方道端の屋台で小さなドラえもんの人形を見つけてMがやはり歓声をあげる。38才の彼女も子供のころ「ドラえもん」と共に育ったという。だから上野動物園入口まえの大きなドラえもん像の前で一緒に「再会記念」の写真を撮る。
そろそろランチということになり、Mがうどんを食べたいという。Lが「上野で良く泊まったあたりに知っているうどん屋がある」というので行ってみるが、行ってみるとソバ屋。ソバとうどんの違いを説明して、それでもいいというのでソバを。彼女は箸が使えずフォークでソバと格闘。それでもしょう油あじが好きだと言って、蕎麦湯も入れずにつけ汁も飲み干した。
浅草へ。まず浅草観光センターへ行って8階へ昇り、見下ろしながらスカイツリーを含めて大体のポイントを説明。下に戻って仲見世を歩く。Mがおかっぱ頭の女の子の大きめのコケシをいくつも買う。次に着物も友達に頼まれて赤・黒と2着も。チョウチンやのれんもほしいというので、本堂の付近を一通り見たあとで、伝統工芸館付近の有名な店を回る。しかし気に入ったものは見つからず、カッパ橋へ。意外なことに店頭に下げる赤ちょうちんを売っている店に引っかかって、「うどん」と書かれた白の丸い大きなチョウチンを買う。聞くと2人の寝室は障子を使ったり、調度品は全て日本のものでまとめてあると言う。提灯はその中に電球を入れて上から吊るして寝室の照明器具として日本の雰囲気を出すために使うらしい。「うどん屋と間違えられるよ」というと「誰にも読めないから大丈夫」とのこと。
更に秋葉原へ。中古のフィギャー店に。彼らに子供はいないが、メイがアニメ好きなので、おみやげにするという。アニメセンターにも寄る。イタリアにもいくつかアニメはあるが、これだけ多くの種類のものがある場所はないとのこと。等身大の人形や看板と一緒に写真を撮る。
最後にメイド喫茶へ是非行きたいと言うので、中古の電子部品店が並ぶあたりの1軒に入ってみる。コスプレの衣装を着けた高校生らしいメイドが2人で給仕してくれるのを彼らは珍しそうに見ている。彼女たちをカメラで撮ることは禁止だそうだが、料理などの撮影は構わないというので、LとMを撮るときに背景にそれとなくメイドを入れて撮った。席料などはなく、少し高めのコーヒー700円だったが、一服して山手線で田町まで送り別れた。
<2日目4/28(日)>
約束通り9時にホテルに行くとスマホにSMSが入った音がする。見ると「下に行くのが10分遅れそうだ」とのこと。ソファでゆっくり休ませてもらっているとやがて「すまん」と言って現れる。まず新宿へ出てJRパスを作ってもらい明日からの旅の特急券などの手配をする。ついでにシティバンクへ寄ってカードで現金を作り、小田急案内所へ行って明日の箱根旅行の資料などをもらう。そのまま西口摩天楼の中を都庁展望台へ。快晴で富士も見えるかと期待したが、薄い白い影が霞み越しに浮かぶ程度。それでも皆カメラをそちらへ集中させている。上に掲げられた富士の見える写真をカメラで撮る人もいる。映画Lost in Translationは彼らもよく知っていてパークハイアットホテルの写真にも力が入る。2階に降りて、全国の観光案内所で行く予定の場所の英語のbrochureをもらう。隣のNSビルで振り子時計を見て原宿へ。
まず明治神宮。さすがイタリア人の若者。どこでも陽気だ。酒樽が高く積まれてある前では酒をがぶ飲みするようなジェスチャーで写真を。でも手水場では神妙に手を洗い、結婚式の新郎新婦には敬意を表しながらカメラを向ける。竹下通りは身動きが出来ないほどの混雑。それでもいくつかの店に入る。コスプレの元祖「竹の子」では衣装の間に入り込んだのでこっそり写真を。Design Festaでは微細に彫られた小さなペンダントや彫像が興味の中心。手に取ってジッとゆっくり見る。日曜で大混雑の続く店の並んだ通りを避けて、背後の住宅街を通ってレストラン街へ。さすがに原宿。人通りのほとんどない細い通りにも気の利いたデザインの家が続き、彼らは1軒1軒に歓声をあげて写真を撮りまくる。食堂街に出ても、ほとんどどの店にも列が出来ている。やっと行列のない大きなインド料理の店を見つけて入る。Mがまたウドンがいいというので、インド風の米粉のウドンをサラダと一緒に取る。
食後、外に出て、Lがエスプレッソを飲もうと言う。彼は前々日に会社関係の日本人と原宿で夕食をしたと言ってその辺りに詳しい。表参道大通りの青山寄りに「ネスプレッソ」という店が出来ている。今月の初めオープンしたばかりで、様々のエスプレッソを試飲させて売っているところ。エスプレッソがクリーム入りで出来る家庭用機器やその機械にかけるパック入りのエスプレッソのパッケージも壁一面にに積み上げて売っている。エスプレッソはもともと少量なので、試飲で充分。要するにタダでコーヒーが飲めるというわけ。ヨーロッパにはこの系列のものが多数あるそうで、Lも「タダでコーヒーが飲めるところがあってもいいんじゃないの」と慣れた様子で鷹揚だ。
オリエンタル・バザールへ「のれん」を探しに行く。彼らの日本式の寝室でドアのところだけ西洋風が残るので、それをのれんで隠すのだそうだ。「福寿」と大きな毛筆が入った1間くらいもの長さの「のれん」が気に入って買う。それを吊るすための竹の棒が付くが運ぶのが面倒そう。
そのあと新緑が美しい皇居東御苑を見て、お台場へ。ゆりかもめに乗って「運転手も車掌もいない」と言うと席を立って2人で実際に確かめに行く。動き出すとLは写真で一生懸命。夕方なのでその時刻からお台場へ向かう人は少なく、車内を歩き回って両側の窓から海やレインボーブリッジを撮る。電車の混み具合の話で時差通勤でかなり解消されたことを言うと、彼は日本のことで感心したことがあると言う。原発のあと電力不足で時差出勤が拡大し、日本では土日にも交代で工場を動かしてエネルギーを融通しあったというニュースを聞いて、「イタリアだったらどんなことがあっても、労働者が土日に出勤するなどあり得ないな」と思ったと言う。
夕暮れも近いが、お台場の人工砂浜や芝生は若者でびっしり。イタリアとの時差を考えると丁度良いらしく、2人で交互に両親へ電話。気分良さそうに長話をしていると、ほどなく「自由の女神像」へ。型どおりフォト・スポットで写真を撮り、ガンダム像へ。ここでもガンダムのポーズをいろいろ撮りながら陽気に騒いで写真におさまる。私もポーズを取らされる。ダイバーシティ・ビル前では多くの若者が身体をくねらせて大音響に合わせて踊っている。Lが車関係の仕事なので、それをあとに、MegaWebへ歩く。MegaWebと書かれていたので、いつものトヨタ・ショールームだと思ったら、1つ前の入口に入ったようで、地下室のような暗い場所に入り込んだ。確かに車は並んでいるが、外国産の時代物ばかり。デロリアンやフェラーリなどの懐かしい大型車がずらり。聞くと昨日開いたばかりの場所だそうだ。Lも興味津々で、丹念に写真を撮り続ける。確かにMegaWebもトヨタの宣伝だけでは好感をもたれないので、新しい企画。外に出てよく見るとMegaWebのあとにHistoryと書かれていてそれで区別しているのを見落としたようだ。行きがかり上「本物」のMegaWebにも案内し、過去の「夢」を覚ますために、気分を変えて隣のVenus
Fortの青空天井の下のカフェへ。またまた彼の希望でエスプレッソを飲んで一息入れ帰路についた。ゆりかもめから見る観覧車にはイルミネーションが点滅し、すっかり暗くなっていた。
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